本年度も様々な要因で海外への長期滞在はかなわなかったが、それにかえて、海外への研究打ち合わせ及び国内への招へいなどを大規模に行うことができ、対面での情報収集が飛躍的に進み、結果として多くの研究成果を得ることができた。更にコロナ禍で発展したオンライン的な手法を用いて共同研究者と恒常的に打ち合わせを行うことで、コロナ禍による遅れを取り戻すこともできた。以下具体的に挙げられた研究成果を記載する。 一つ目は対数的加群全般に対するB完全列の導入である。本研究における重要な役割を果たすものがSolomon-寺尾多項式であった。これに対するD加群を用いた意味付けを行うことが重要であったが、そもそもSolomon-寺尾多項式は自由配置の場合以外に計算がほとんどできないという強烈な弱点があった。それに対して応募者はB列という新しい概念を対数的ベクトル場に導入し、それを用いてSolomon-寺尾多項式を帰納的に計算する方法を導入することに成功した。 二つ目は共同研究相手である西オンタリオ大学のGraham Denham氏との共同研究により、対数的微分構造に関連したZiegler予想を完全に解決することに成功した。対数的微分形式の構造はSolomon-寺尾多項式の計算に重要であり、今後極めて重要になる結果と考えている。 また2023年12月に立教大学で本課題に関連した国際研究集会を開催し、Denham氏やRoehrle氏らと情報交換を行い、Liouville複体とSolomon-寺尾多項式の関係が相当程度明らかになった。 補助期間全体を通じて、国際共同研究として、Solomon-寺尾多項式とLiouville複体及び新しい幾何学との関連を明らかにし、かつZiegler予想の解決などを達成することで、渡航期間については180日未満となったが、オンライン手法等で補い、本研究を完了した。
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