研究課題/領域番号 |
18KK0392
|
研究機関 | 国立研究開発法人建築研究所 |
研究代表者 |
北 佐枝子 国立研究開発法人建築研究所, 国際地震工学センター, 主任研究員 (10543449)
|
研究期間 (年度) |
2019 – 2022
|
キーワード | カスケディア / 紀伊半島 / 短期的スロースリップ / 長期的スロースリップ / 豊後水道 / スラブ内地震 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、令和2年度1月からの米国渡航の続きの研究活動を11月末まで行った。主な滞在先であるカリフォルニア大学バークレ校では、引き続き客員研究員として活動を行った。南カリフォルニア大学は2度現地訪問し、スロー地震とスラブ内地震の関係について理解を深めるための研究活動を行った。紀伊半島での研究を引き続き行っていたが、新たに豊後水道での研究にも取り組み始めた。豊後水道でも、紀伊半島と同様に、長期的スロー地震の発生前後にスラブ内での応力軸の時間変化の検知に成功した。また、スラブ内地震の地震活動のb値の低下についても、長期的スロースリップが進行している間に起きていることを見出した。また米国カスケディア地方での地震活動及び地殻変動現象として継続時間の短いスロー地震(短期的スロースリップ)以外に、その発生域よりも海側で長期的スロースリップがあるかもしれない兆候が米国での観測データに見られることを在外研究での文献調査により知ることができた。豊後水道では、長期的スロースリップと短期的スロースリップの両方が発生しているが、もしカスカディアで長期的スロースリップが本当にあることが確認されたら、豊後水道での研究が複数の国・地域で通用するモデルになる可能性を意味している。地域比較研究は、以前よりも重要であること、すなわち豊後水道にて短期的スロースリップと長期的スロースリップとスラブ内地震との連動や相互関係を明らかにすれば、それが世界の別の沈み込み帯研究に非常に役に立つこともわかってきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの海外との活動は、オンラインでの活動と対面とを組み合わせた環境での活動を行ってきた。カリフォルニア大学バークレ校と南カリフォルニア大学では、滞在期間中に週1-3回ほど研究打ち合わせ・研究指導を数時間ずつ対面もしくはオンライン会議システムを利用して実施した。カリフォルニア工科大学およびカリフォルニア大学デービス校(U C Davis)へは短期間の訪問を行った。UC Berkeley及びスタンフォード大学、E E R I(米国の建築基準法を作る団体)、日本鉱物科学会、広島大学に対してはオンライン環境での招待講演を行った。また、オンライン環境を活かし、米国内では米国地震学会(4月開催)、SCEC(9月開催の南部カリフォルニア地震センター主催の研究集会)、GAGE-SAGE 2021(測地学と地震学に関する大学連合が8月に開催の研究集会)などにオンライン参加し、日本地球惑星科学連合春季大会(5-6月)と地震学会秋季大会(10月)などにもオンライン参加した。UC Berkeleyの土木工学科主催した研究集会(Geotechnical Engineering Research Symposium)には、11月に対面で参加した。U C Berkeley、南カリフォルニア大学、ワシントン州立大学のセミナーに関しては、定期的にオンライン環境にて参加した。また、マサチューセッツ工科大学、ボストン大学、米国地質調査所、東京大学、筑波大学、気象研究所、産業技術総合研究所等の研究者とも、オンラインでの研究打ち合わせを行った。 紀伊半島の短期的スロースリップに関する研究成果をまとめたものは、Nature communicationsにて論文発表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
感染症の状況が改善され、海外渡航が自由にできる環境が整いつつあるので、短期の渡航により効率的な研究打ち合わせの検討を現在行っている。当初予定していたカナダや複数の大学等への渡航はできていない。感染状況が良くなったが、オンラインも用いた対応も同時に考えている。
|