最終年度は、本課題で得られた成果の総まとめの年度とした。まず国内では、6月と9月にはスロー地震に関する野外巡検に紀伊半島と房総半島で参加し、流体が仲介するスロー地震とスラブ内地震の連動可能性について意見交換を行い、石英脈の役割について古いプレート境界の地層の様子を実際に観察しながら地質学者と議論した。9月には国際研究集会では、途上国研修の内容を反映させた内陸地震の研究発表をしつつ、スラブ内地震とスロー地震に関する研究に関する海外の最新情報の収集・情報発信・意見交換を行なった。 8月にはUCバークレおよびスタンフォード大学で2週間の在外研究を行った。 2月には、南カリフォルニア大にて在外研究を1週間行った。フィリピン、トルコなど途上国での地震研究に関する情報交換を行った。これまで短期的スロースリップとスラブ内地震との間に見られた連動性に関する知見を活かし、東海地方と豊後水道下の長期的スロースリップとスラブ内地震との関係について、共通性と地域性についての抽出を行った。スロースリップ発生中の応力比の低下が共通してみられたことは特筆すべき成果であり、これは測地学的解析では観測されないが、理論的に見て予測されていたことを地震活動の解析から見出した世界初の成果と思われる。また、南カリフォルニア大学の近郊のカリフォルニア工科大学にも出向き、金森博雄名誉教授等との研究打ち合わせも行い、特に能登半島地震を受けたその後の研究や、関東地震とスラブ内地震と房総スロースリップなどについて知見交換も行った。 なお3月には東北地震の後のスラブ内の応力場への影響に関する共著論文がScience Advances2)にて受理された。
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