研究課題/領域番号 |
18KK0393
|
研究機関 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
研究代表者 |
松本 涼子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 企画情報部, 学芸員 (00710138)
|
研究期間 (年度) |
2019 – 2023
|
キーワード | 四肢動物 / アルバノペトン類 / 平滑両生類 / 頚椎 / 機能形態 / 解剖学 |
研究実績の概要 |
四肢動物の進化史において、首は体幹に対する頭部の自由度を高め、陸上での捕食や知覚行動に重要な役割を果たした。では、彼らの首の可動性はどのように進化し、陸への適応を果たしたのだろうか。現生平滑両生類は首の動きは、上下方向に制限されるが、この系統の基部に位置する絶滅種のアルバノペトン類は高度に陸生適応し、首の可動性が高かったと考えられている。これが事実であれば、平滑両生類は進化の過程で首の可動域が制限されるようになったことになる。本研究では、現生平滑両生類の筋骨格モデルをベースとしてアルバノペトン類の首の可動性を復元し、生息環境に応じた首の可動性の増大と抑制の意義を議論することで、平滑両生類の進化の一遍を解き明かす事を目的とする。本研究は以下の手順で行う事を予定している。 (1)頭部や首の筋骨格の3D形状の取得:絶滅平滑両生類アルバノペトン類および現生平滑両生類をμCTで撮像し、3D形状を取得。 (2)3D筋骨格モデルの作成: (1)で取得したアルバノペトン類の頭部と首の3D骨格形状を3Dプリンタで出力し(ロンドン大学所有)、骨格のみで予想される後頭部関節の可動範囲を調べる。 (3)形態解析: 基課題では、平滑両生類の後頭顆と第1頚椎の3D形態情報を収集し、形態解析によって骨格形態の多様性を把握し、各運動様式との対応関係を探る予定であった。これにアルバノペトン類を加え、その形態の特異性を検証する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、パリ自然史博物館に所蔵されているアルバノペトン類のタイプ標本を借用し、受け入れ研究機関である英国ロンドン大学の研究設備(CTスキャナなど)を利用してデータの収集と解析を行う予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染症の拡大により、ロンドン大学では2020年4月より海外からの研究者の受け入れが一時的に中止され、昨年度に続き今年度も渡航できなかった。また、本研究に必要不可欠なパリ自然史博物館の標本についても同様の理由で借用できなかったため、予定通り研究を遂行できなかった。そこで本研究の基盤を築き、議論を深めるため基課題の研究に従事した。 基課題では、四肢動物の進化に伴う後頭部と首の運動機能の変遷を系統的に議論することを目的としている。四肢動物における、頭部と首の接合部の関節は、1点関節のものと2点関節のものに大きく分けられる。これら関節タイプの違いは、「後頭部」と「首」の回転軸の位置や、向きの違いを反映していると予想されるため、現生四肢動物(鳥類、爬虫類、哺乳類、両生類)の遺骸を用いて両関節タイプにおける可動範囲の特性を検証した。以上のように今年度は所属機関において基課題に従事したため、本研究費は使用しなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
ロンドン大学が海外研究員の受け入れを再開するまで、国内で可能な限り現生有尾類のCTデータの収集と解析、頸部の解剖を進める予定である。
|