研究課題/領域番号 |
18KK0397
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
長尾 聡 兵庫県立大学, 理学研究科, 特任助教 (30452535)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2023
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キーワード | タンパク質 / アミノ酸選択的同位体標識 / 分子間相互作用解析 / 固液界面 / 和周波発生分光測定 |
研究実績の概要 |
生体内では、タンパク質が単分子として機能するだけでなく、多くはタンパク質同士や他の生体分子と結合・解離することで、離散と集合を繰り返して機能している。タンパク質の機能は極めて多様であることから、生体分子のダイナミックな複合体形成を高い構造分解能で観察し、それを化学的に制御出来れば、生命現象の理解のみならず単分子では見られない新規な機能性分子の創成に繋がる。近年、生体分子の複合体構造の解析手法としては、主にクライオ電子顕微鏡による複合体構造解析の高分解能化や、MD計算および機械学習を利用した構造予測を利用したアプローチなど新規な構造決定法の開発が進められている。本研究では、上述の方法と異なるアプローチとして、アミノ酸の同位体標識法、特にアミノ酸選択的な標識法を用いてNMRや和周波発生分光測定などにより生体分子が集合する際の不均一性や構造ゆらぎに起因する不完全な分子配列の解析を行っている。 生体内における生体分子の複合体形成は溶液中だけでなく、溶液と溶液の仕切りとなる細胞膜を介して行われる。そこで本年度は昨年度に引き続き、米国ミシガン大学のZhan Chen研究室との共同研究を進展させ、アミノ酸を選択的に同位体標識したGB1 proteinに対して質量分析を主とした標識化の評価と、一連のアミノ酸標識されたGB1 proteinの和周波発生分光測定を行い、13C標識化に伴うNH振動の波数変化パターンを収集し、MDシミュレーション解析と併せた解析を行うことにより、GB1 proteinの表面アミノ酸と固体表面が相互作用する配向を決定した。本成果は投稿論文として受理され、国際会議において発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の重要な点として、不完全な配列を有するナノ構造体の構造解析に有効な固体高分解能NMR解析を行うための日本ー米国間の国際共同研究体制を構築することが挙げられる。本年度は、米国ミシガン大学化学科のZhan Chen教授と新規なタンパク質構造解析法の開発を目的とした共同研究が大幅に進展し、固体表面上におけるタンパク質の新規な配向決定法について論文投稿を行い、その新規性が認められ受理された。また、本成果について国際会議での発表も行われた。一方で、昨年度に引き続き新型コロナウィルスの世界的な感染拡大に伴って海外渡航が困難となり国際共同研究のさらなる推進が困難であった。以上の点より、本年度の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は研究代表者の研究所属機関の変更があり、新たに研究環境を構築する必要がある。NMRについては新たに共同研究を開始した徳島大学齋尾教授と継続して進める。また、固体高分解能NMRについては、大阪大学蛋白質研究所の固体高分解能NMRを利用した共同研究を進め、他に米国ウィスコンシン大学のNMR-FAMに異動したミシガン大学での共同研究者と国際共同研究を進める。
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