研究実績の概要 |
当研究は、プラスチック光ファイバーのコアに形状に異方性を持つドーパントを担持させた際に、ファイバーの変形に伴ってそれらのドーパントがどのように配向するか、またどのように復元するかの詳細なダイナミクスを調査することを目的とし、国際共同研究の形で実施された。過去に圧電セラミック材料でこのようなホスト-ゲスト系の解析の経験ががあったトルコ Yeditepe大学のOnur Cem Namli博士と共同研究を行った。 電気通信大学では、ゼロ・ゼロ複屈折性ポリマーで知られる三元共重合体 poly(methyl methacrylate/benzyl methacrylate/2,2,2-trifluoroethyl methacry- late=45/44/6 w/w/w/)でコアを構成した光ファイバーを作製し、その内部に異方性ドーパントを分散させた試料を準備した。この異方性ドーパントの物性、凝集性、添加濃度により、光ファイバーの弾性的性質が影響を受ける。また、ドーパントの分散性に勾配が生じる場合は、主としてファイバー半径方向に弾性的性質の勾配が生じる。 Yeditepe大学では、ポリマー円柱の圧縮実験をもとに、円柱断面の応力分布を解析した。結果として、ヘルツ接触を基準とした場合、理想的な均質体とは異なる応力分布が生じていることがわかり、ドーパント添加の影響を受ける以前の三元共重合体が、想定されていたランダム共重合ではなく、実際は構成するモノマー種が局在化していることが示唆された。 この結果を受け、電気通信大学において、さまざまなコンディションでの三元共重合体の重合実験を行った。その結果、段階的な重合においては、反応早期に固化したポリマー層(あるいはゲル層)と、未反応のモノマー層との間で材料の交換が起こり、このことが共重合を不均一にする原因となっていることが示唆された。
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