研究課題/領域番号 |
18KK0402
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
プラムディタ ジョナス 日本大学, 工学部, 准教授 (50615458)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 橈骨遠位端骨折 / 骨折形態 / 転倒 / 有限要素解析 / 動的試験 / 力学パラメータ / 前腕姿勢 |
研究実績の概要 |
手首有限要素(FE)モデルの検証と妥当性確認に活用できる実験データを取得するために,本研究では,米国バージニア大学(UVA)において,PMHS(Post Mortem Human Subject)の前腕を用いた動的試験によりヒト手首の力学応答を計測するとともに,個体別FEモデルによる実験再現解析手法を確立することを目的としている.2019年度では,動的試験に使用する固定治具および試験機の開発および前腕FEモデルの構築指針の検討を行い,本実験に向けた準備を進めてきた.2020年度では,動的試験を実施し,実験結果に基づいて手首の力学応答を解析するとともに,試験条件の違いによる骨折形態の変化を調査した.これまでの研究より下記の成果を得ることができた. 1.UVAの協力により開発した固定治具および動的試験機を用いて予備実験を行い,この実験結果をもとに試料の固定方法および試験条件を決定した.また,本実験を実施し,インパクターの荷重と変位,骨表面のひずみ,骨間挙動および骨折形態に関するデータを取得した.以上より,動的荷重を受けたヒト前腕の力学応答を計測するための新たな実験的手法を確立することができた. 2.実験データを解析した結果,最大荷重等が先行研究と同程度の値を示し,実験結果の妥当性および再現性を確認することができた.また,実験後の試料の骨折状況を調査した結果,臨床現場で確認された各種骨折を再現できることを確認した.さらに,試験条件と骨折形態の関係を分析した結果,橈骨-尺骨のねじれ状態および前腕の傾きが橈骨等の骨折形態に影響を及ぼす可能性があることがわかった. 3.個体別前腕FEモデルを用いて実験再現解析を実施する予定である.そこで,前腕のCTデータをもとに精巧な前腕FEモデルを構築し,これを用いて動的試験と同様の条件下における動的有限要素解析を実施できることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度において動的試験に用いる固定治具や試験機の製作を完了させることができたため,2020年度においてこれらを用いて予備実験および本実験を実施することができた.実験から得られたデータを解析し,各力学パラメータの傾向や最大値などを求めることができた.また,試験後のCT画像やレントゲン画像より骨折形態を特定することができ,試験条件と骨折形態との関係性を考察した.以上より,UVAで実施した動的試験が成功し,今後の研究に活用できる貴重なデータセットを取得することができたと考えている. 樹脂材料より製作した固定治具を用いることにより,治具に固定した状態の試料のCT撮影を行うことができ,この撮影データをもとに前腕の三次元モデルを構築できることを確認した.個体別前腕有限要素(FE)モデルの構築は,UVAの協力を得て,2020年度中に完了させる予定であったが,新型コロナウイルス感染症の流行に伴う入構制限等のため,前腕FEモデルが完成できなかった.しかし,UVAとの協力関係を続けており,2021年度中に個体別前腕FEモデルの構築を完了させ,当初の計画どおりこのモデルを用いて実験再現解析を行い,プロジェクトの遅れを取り戻す予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では,実験結果に関する考察を深め,骨軸と荷重方向の関係や試料間の骨密度の比較などの詳細解析を行う予定である.また,骨折の発生および骨折形態を予測するための適切な力学パラメータの検討も実施する予定である.そして,これまでの実験データの分析結果をまとめ,学術講演会等にて発表する. 実験再現解析を実施するために,個体別前腕有限要素(FE)モデルが必要となる.動的試験の前に撮影した試料のCTデータより個体別前腕FEモデルを構築し,これを用いて動的試験と同様の条件下で衝撃解析を実施する.解析結果をもとに骨内部の力学パラメータ等を調査することができるとともに,骨折形態の多様化に影響を及ぼす要因を明らかにすることができると考えられる.CTデータから構築が不可能である靭帯と軟骨のモデル化が課題となっているが,UVAにより開発された下肢FEモデルを参考にして靭帯と軟骨のモデル化を実施する予定である.また,多数の個体別FEモデルを迅速に構築するために,UVAのスケーリング技術の活用を検討する. 今後もUVAとの研究交流を継続し,研究の進捗状況についてオンラインミーティングを定期的に行い,本研究プロジェクトを推進する予定である.
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