超音速燃焼波であるデトネーション波を推進エンジンに適応した場合、高速燃焼による燃焼器小型化、既存燃焼サイクルで最高の理論熱効率、衝撃波断熱圧縮による圧縮機構の簡素化を実現する。 インジェクタ(燃料・酸化剤を燃焼器に供給する装置)を理想化した数値計算では、デトネーション燃焼によって圧力ゲイン(酸化剤全圧に対して燃焼ガス全圧が上回ること)が達成できることが示されている。しかしながら、実際のデトネーションエンジン作動では、非理想的な弱いデトネーション波が伝播し、圧力ゲインは達成できていない。 本研究では、燃料・酸化剤の混合過程を排除し、高圧燃焼ガスのインジェクタ上流への逆流と圧力ゲインとの関係に焦点を絞り、デトネーションエンジンの利点(圧力ゲイン)を阻害する原因を特定することが目的である。 当該年度では、完全予混合型回転デトネーション燃焼実験設備を新たにカルフォルニア工科大学内に設置した。燃焼実験では、燃料としてエチレン、酸化剤として酸素、希釈剤として窒素を用いた。また、初期予混合気圧力を1~3気圧とした。実験の結果、インジェクタスリットのギャップがデトネーション波のセルサイズよりも小さい0.1mmであったとしても、インジェクタ上流側に火炎もしくは自着火温度以上となる強い衝撃波が侵入し、予混合気がRDE作動する前に燃焼する「フラッシュバック現象」が発生した。 今後、フラッシュバック現象を抑制可能なインジェクタ(多孔質セラミックスなど)を用いて予混合RDEの作動を実証する。これにより、定義が難しい混合過程を排除し、圧力ゲインを阻害する物理メカニズムを解明するための基礎研究体系を確立する。
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