渡航前、申請者は日本で本課題で研究対象とする磁気プラズモニック物質を作製し、この試料の基礎的な物理特性を評価した。渡航中は申請者のHost ResearcherであるDr. J. G. Linらと共に、以下の研究を実施した。 (1) 局在表面プラズモン共鳴による増強電場「ホットスポット」を実験的に検証した。当初は、Scanning Near-field Optical Microscopy(SNOM)を用いてホットスポットを可視化してイメージング画像を得ることでホットスポットの直接観察を行う予定であった。しかしSNOMでの実験が困難であることがわかったため、計画を変更し表面増強ラマン分光法によってホットスポットの発生を明らかにした。(2) 局在表面プラズモン共鳴が励起する入射光波長では、他の波長帯と比較して磁気プラズモニック物質の極Kerr回転角が最大となることがわかった。また局在表面プラズモン共鳴励起波長の光は、他の波長の光と比較し、ホットスポットの電場強度が最大となることを表面増強ラマン分光法から明らかにした。すなわち極Kerr効果の増大と、ホットスポットの相関関係を実証した。(3)透過型電子顕微鏡を用いて磁気プラズモニック物質の微細構造を明らかにした。(4)電磁波解析ソリューションソフトウエアを用いて磁気光学効果に対するプラズモンの影響を理論的に求め、実験結果との整合性を精査した。
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