本年度は、新型コロナウィルスの影響により渡航が出来なかったが、昨年度持ち帰った試料を活用した発光デバイスの作製に取り組んだ。また、オンライン会議を複数回実施し、パンデミック収束後の計画を議論した。上記に加え、リモート水素プラズマ支援FePt合金ナノドット自己組織化形成プロセスにおける基板温度が磁化特性に与える影響を調べた。具体的には、n-Si(100)基板を酸化して形成したSiO2膜上に、電子線蒸着により厚さ~1.0nmのFe薄膜を堆積した後、引き続き、同一チャンバ内で厚さ~1.3nmのPt薄膜を形成した。その後、リモート水素プラズマ処理を行った。尚、リモート水素プラズマ処理時における基板温度は、200°C および400°Cとした。 極薄Pt/Fe積層膜を蒸着直後の表面ラフネス(RMS)は~0.25 nmであり、均一な膜が形成されているが、外部非加熱でリモート水素プラズマを照射した場合、高密度のナノドット形成が認められ、リモート水素プラズマ照射時に基板加熱した場合では、基板温度の増加に伴いドット面密度が減少するとともにドット高さが増加することが分った。形成したFePt合金ナノドットの面直方向における磁化特性を評価した結果、400°Cでリモート水素プラズマ照射で形成したナノドットでは、外部非加熱および未処理の場合に比べて保磁力および飽和磁化の顕著な増大が認められた。尚、外部非加熱リモート水素プラズマ照射によりナノドットを形成後、真空中400°Cアニールした場合では、アニール前後において磁化特性に顕著な差は認められなかった。これらの結果から、リモート水素プラズマ照射時の外部加熱が、金属原子の表面マイグレーションと凝集とともに、規則化合金反応の促進に極めて有効であることを明らかにした。
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