研究課題
本研究では,指向性エネルギー堆積法を利用し,構造最適化によるメカニズム設計に基づき,金属負熱膨張複合材料を開発する.指向性エネルギー堆積法とは,任意の金属材料をノズルにより上から直接供給し,レーザーで溶融しながら構造を積層していくという手法であり,供給材料が異なる二つのノズルを切り替えながら造形することにより,金属複合材料が一度のプロセスで作成可能である.この技術に関して,海外共同研究者であるAlbert To教授は第一人者であり,研究交流を通じて世界最先端の技術の習得を図る.そして,指向性エネルギー堆積法の利点を活かし,基課題では難しい,大型の部品を対象とした材料を,構造最適化法を活用しつつ検討する.しかし,大型構造においては温度ムラが生じるため,それを考慮した熱膨張の制御を行う必要がある.このような温度ムラに対応するため,適材適所で熱膨張を変化させたいわゆる傾斜機能構造の実現も目指す.本年度は,海外共同研究者の元に滞在し,指向性エネルギー堆積法の原理及び造形プロセスの解析技術について指導を受けながら,構造最適化構築のための基礎情報を収集した.しかし,指向性エネルギー堆積法は精度に難があり,かつ機器の故障で使用できない期間が長かったものであるから,計画の見直しが必要なことがわかった.積層造形では,直接対象を造形する他に,造形したい対象と同型の空孔を含む型を造形し,鋳造に用いるという手法も良く用いられている.そこで本研究では代替手法として積層造形で二種類の型を造形し,二段階の鋳造による負熱膨張複合材料の形成法を検討した.組み合わせる二種類の金属は,線膨張係数(CTE)に大きな差があることが望ましい.その結果,錫と亜鉛を選定した.また,この組み合わせは互いの濡れ性が低いということもなく,複合材料を形成するのに問題はない.
3: やや遅れている
当初予定していた製法に問題点が見つかったが,それも研究成果とも言える.他方,米国滞在の利点を活かし,代替手法の検討を素早く行えたため,研究計画に影響はない.また,滞在を通じ,新たな研究テーマの着想にも至ったため,国際共同研究の進捗としては問題ないと考える.しかし,2020年度はコロナ禍で大学が閉鎖されていた期間があり,また,学生の大学への登校日数も少なく,実験に深刻な遅れが生じた.そのため,研究期間を一年延長し,実験を実施する.
代替手法を用いて負熱膨張複合材料の試作実験を進める.米国への長期滞在は終了したが,滞在中に着想した新テーマも含め,引き続き国際共同研究を強化していく.
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Computer Methods in Applied Mechanics and Engineering
巻: 370 ページ: 113231~113231
10.1016/j.cma.2020.113231