研究課題/領域番号 |
18KK0413
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
山田 亮祐 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40608626)
|
研究期間 (年度) |
2018 – 2020
|
キーワード | 酵母 / 微細藻 / 代謝工学 / バクテリア / 光合成 / 発酵 |
研究実績の概要 |
産業規模での培養に適した酵母やバクテリアなどの代謝を改変し、再生可能な植物由来グルコースから、燃料や各種化成品原料として利用可能なバルクケミカルや、医薬品などに利用可能な種々のファインケミカルを安価かつ安定に生産する技術の確立が期待されている。本研究では、一般に微生物を用いた有用物質生産の原料に利用される高価な有機炭素源のグルコースを、地球上に膨大に存在する安価な無機炭素源の二酸化炭素に転換することを着想した。微細藻は光合成により二酸化炭素を有機炭素源に変換することが可能である。しかし、微細藻の増殖速度は他の微生物と比較して非常に低い。近年、特定の種の微細藻と酵母を混合して共培養すると酵母-微細藻間に複合代謝ネットワークが形成され,微細藻の光合成効率が大幅に向上することが報告された。そこで、酵母・バクテリア-微細藻間に形成される複合代謝ネットワークを解明し、さらに深化させることで、二酸化炭素から種々のバルクケミカルおよびファインケミカルを効率的に生産する革新的技術を確立することを目的とする。 今年度は、昨年度に引き続き、微細藻の光合成効率が向上するバクテリアと微細藻との組み合わせを探索することを試みた。具体的には、種々のバクテリアと微細藻を単独または組み合わせて培養を行い、細胞の増殖およびクロロフィル量の経時変化を測定した。種々の組み合わせを検討した結果、枯草菌Bacillus subtilisと緑藻Chlamydomonas reinhardtiiを共培養することでChlamydomonas reinhardtiiの増殖速度が大幅に向上することを見出した。また、それらの共培養において、培養時のpHが増殖能に大きな影響を与え、培養に最適なpHは枯草菌の株によって異なることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標は、微細藻との共培養により光合成効率が向上するバクテリア(大腸菌・枯草菌など)や酵母(Saccharomyces cerevisiaeなど)との組み合わせを更に探索し、それらの共培養における培養条件などの検討を行うことであった。 今年度は、昨年度から、微生物種探索の幅を広げ、更に多種類の、共培養により微細藻の増殖速度が向上する酵母・バクテリアと微細藻との組み合わせを同定することに成功した。特に枯草菌Bacillus subtilisと緑藻Chlamydomonas reinhardtiiを共培養することで増殖速度が向上する現象はこれまでに報告例が無く、新たな知見を見出した。また、培養条件に関して、初期植菌量や初期pHなど種々の検討を行った結果、初期pHがバクテリアや微細藻の増殖能に大きな影響を与えることを明らかにした。従って、今年度までの研究進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度同定した微細藻の増殖速度が向上する酵母・バクテリアと微細藻とを共培養した場合に、どのような複合代謝ネットワークが形成されているのかをトランスクリプトーム解析などにより解明する。更に、酵母・バクテリアと微細藻との共培養によりエタノールやブタンジオールなどの種々の有用物質を生産することを目指す。
|