研究課題
本研究では、応募者が世界で初めて実現した細胞組織濡れ性評価法と海外共同研究者が独自に開発した空間的・力学的細胞外マトリックス動態評価法を用いて、細胞分化時のダイナミックに変化する濡れ性とマトリックス動態から細胞の品質を非破壊的に評価することを目的としている。本年度は、スイス連邦工科大学チューリッヒ校に渡航し、国際共同研究の一環として細胞外マトリックス動態評価法の習熟を進めた。特に、細胞外マトリックスの中で最も豊富に含まれる糖タンパク質であるコラーゲンを対象として、その微小形態の制御と解析を行った。コラーゲンは繊維状の形態を有し、細胞側の膜タンパク質を介して細胞接着に関与するタンパク質であり、繊維化など微小形態のコントロールが比較的容易であるという特徴がある。このことから、細胞外マトリックスの動態を人為的に調節しやすいモデルとして利用できると考えた。コラーゲンは、酸性液中ではモノマーとして存在するが、中性液中ではコラーゲン分子が束のようになり比較的大きな構造をとる。微小形態は、超撥水・超親水表面構造に見られるように濡れ性に影響を及ぼすと考えられ、さらに細胞の微小環境の一因として細胞接着など様々な機能に影響する。実験を通じて、溶液のpHコントロールを通じて、コラーゲンのモノマーから繊維化への転移を確認している。また共焦点レーザー顕微鏡、多光子励起顕微鏡および原子間力顕微鏡による観察をそれぞれ実施し、コラーゲン繊維の検出及び形態解析を進め、コラーゲン繊維の微小形態を再現性よく制御できることを確認した。
1: 当初の計画以上に進展している
細胞外マトリックス動態を再現性良く人為的に制御することに成功し、スムーズに濡れ性評価を実施できる見込みができたため。
細胞外マトリックスの微小形態が細胞動態にまで影響を及ぼすことが知られており、本研究においては、濡れ性、細胞外マトリックス、細胞の3要素を結ぶ科学的洞察が必要である。これまでのところ、水が物質とよくなじむ水和現象が核となっていると予想しており、この点に踏み込んだ研究を推進していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件) 備考 (5件)
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