研究課題/領域番号 |
18KK0417
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三木 恒久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (20415748)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2023
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キーワード | 木材 / 評価技術 / 微細構造 / 物性 / 変形 |
研究実績の概要 |
今年度は、木質細胞間のせん断すべりによる塑性流動変形に対する脱リグニンの影響を検討してきた。 脱リグニン木材は、減衰全反射赤外 (ATR-IR) 分光法、核磁気共鳴 (NMR) 分光法、ラマンイメージング解析、および動的粘弾性測定によってキャラクタリゼーションした。 特に、リグニンの化学構造、分布、および分子運動性が木材の変形性に及ぼす影響を評価した。 水膨潤状態の脱リグニン木材は、無処理木材よりも低い圧力で細胞壁を破壊することなく大きく変形した。 流動開始点での応力と木材の変形断面積の 2 つの観点から変形能を評価した結果、脱リグニンおよび未処理の木材は、圧縮中の温度上昇とともに増加した。 脱リグニンの初期段階では、特に細胞コーナーで複合中間ラメラのリグニンが減少することで、流動開始点での応力が減少したと推察した。 ただし、木材の変形断面積は、これらの段階での脱リグニン時間によってわずかに変化した。 脱リグニンが進むと、細胞壁の多糖類付近のリグニンが除去され、変形能が大幅に向上した。 さらに、流動開始点での応力は、圧縮中の温度に関係なく、水で膨潤した木材のリグニンのガラス転移温度に対応する tan δ のピーク温度に比例して増加した。 今回得られた化学的および物理化学的特性と塑性流動変形能との相関関係から、低エネルギーで生産性の高い木材の成形加工の開発に有益であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス拡大防止のため、引き続き、産総研職員としての海外渡航ができない状況にある。当初計画していた赴任スケジュールを見直しながら、国内で実施できる検討課題を推進してきたが、ようやく令和5年度には渡航できる可能性が見えてきたため、赴任先ともスケジュールを確定していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
赴任先で実施する「空隙構造の評価」について、国内で取得できるデータを蓄積してきたので、それらを基に議論を進める。双方の結果を集約し、取り纏めていく予定である。
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