研究課題
これまで、化学修飾した木材の微細構造評価として、赤外分光法(FTIR)、ラマン分光法、X線回折法、固体核磁気共鳴分光法(固体NMR)による検討を行っている。様々な化学処理(酸化,溶媒抽出およびアルコール分解)により脱リグニンされた木材の構成ポリマーの化学構造と組成を検討した。Klaidiz法による酸化は、反応活性部位がリグニンの末端にあるため、重量損失が小さいにもかかわらずリグニンを選択的に除去したが、溶媒抽出(ジメチルスルホキシド、イオン液体、ジオキサン)およびアルコール分解は、リグニンとヘミセルロースを同時に除去する傾向が見られた。木材の変形性や成形品の耐久性を向上させる複合材料化で活用する樹脂含浸処理について検討し、樹脂含浸後の溶剤除去が木材の変形に及ぼす影響を明らかにした。 メラミンホルムアルデヒド (MF) 樹脂の溶液を木材に含浸させ、真空またはさまざまな相対湿度 (RH) 条件下で木材から溶媒を除去し、得られる含浸木材を評価したところ、溶媒除去中の相対湿度が高くなると、MF 樹脂が細胞壁に浸透できるようになり、細胞内腔と細胞壁に含浸した MF 樹脂の重合が促進された。 この含浸樹脂の重合により、変形能が大幅に低下した。 変形過程のMF樹脂含浸材の木質繊維の配向性と繊維細胞レベルでの分布をX線回折とラマンマッピングにより評価し、溶媒除去プロセス中の相対湿度が高いほど、木質繊維の配向性と細胞壁内の樹脂の量が増加することを示した。 これらの結果は、樹脂含浸後の溶剤除去工程が、変形加工時の変形性能や成形品に大きな影響を与えることを示唆した。
4: 遅れている
依然として海外渡航計画が立っておらず、本課題の最終とりまとめができていない。今年度は、先方と協議し、どのように成果を発表するか確実に検討したい。
申請者自身の所内での役割が変更してきたため、どのようにETHの研究者と課題を分担するのか、再考が必要である。おおよそ計画していた実験・解析は国内で実施可能な状況になっているので、渡航すべきところについて考える。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Industrial Crops and Products
巻: 212 ページ: 118327~118327
10.1016/j.indcrop.2024.118327
Wood Science and Technology
巻: 58 ページ: 161~176
10.1007/s00226-023-01522-1