研究課題
本研究では気孔の開閉運動の調節にかかわっている二種のカルシウムイオンチャネル候補因子gcCNGCとGCM1、そしてその下流で機能すると考えられるカルシウムイオンセンサータンパク質の機能解析を行っている。アブシジン酸など様々な刺激に対する気孔応答の観察をした結果、gcCNGCは一遺伝子破壊のみで顕著な表現型を示したが、GCM1遺伝子破壊変異体の表現型はそれほど強くなかった。この結果から、GCM1に関してはホモログ遺伝子との機能重複が示唆されたため、孔辺細胞mRNAを用いたRT-PCR解析を行い、孔辺細胞に高発現するGCM1のホモログ遺伝子を3つ同定した。そのうちの2つGCM2とGCM3の遺伝子破壊変異体を単離し、GCM1遺伝子破壊変異体を交配することで、GCM1、GCM2、GCM3の三重遺伝子破壊変異体を作成した。気孔開度測定実験の結果、GCM1の単一遺伝子破壊変異体よりも強い表現型を観察することができた。またGUSプロモーター解析を行い、RT-PCRの結果と一致してGCM2はGCM1と同様に孔辺細胞に強く発現することを確認できた。無傷の葉を用いることのできるイオンチャネル活性評価系の構築を進めているが、再現のよいデータを取得できるレベルには達していない。気孔開閉に関わる新規カルシウムイオンセンサータンパク質の探索を共同研究により行った。カルシウムイオンの結合により活性化するタンパク質キナーゼであるCPKが内向き整流性カリウムイオンチャネルの活性制御を介して、二酸化炭素やアブシジン酸による気孔閉鎖の調節に関与していることを明らかにした。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の蔓延により当初予定していた渡航が中止となった。しかし2019年度の渡航中に取得していた電気生理学実験のデータを利用して共同研究成果論文を発表することができた。
共同研究者とメールやオンライン会議を利用したディスカッションを現在定期的に行っており、今度も続けてゆく。無傷の葉を用いることのできるイオンチャネル活性評価系(バレル電極を用いた二本刺し膜電位固定法)の構築を引き続き行う。パッチクランプやカルシウムイメージング実験により、今回作成したGCM三重遺伝子破壊変異体の表現型の解析を行う。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)
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