研究課題
葉の表皮に存在する気孔は、一対の孔辺細胞からなる小孔であり、開閉運動により光合成の材料である二酸化炭素の取り込みや蒸散による水分放出の調節を行う重要な場所である。本研究では、この気孔の開閉運動の制御にかかわるカルシウムイオンチャネル候補因子であるgcCNGCとGCMの機能解析を進めている。2022年度は共同研究先に渡航することができた。GCMについて様々な多重変異体を作成して気孔表現型解析を行った結果、これまで得ていた変異体ラインよりも強い表現型を示す多重遺伝子破壊変異体を単離することができた。また、この多重遺伝子破壊変異体では、暗所下での気孔閉鎖応答は野生株と同様に観察されたことから、多重遺伝子破壊変異体で観察された気孔表現型は、気孔の発達・形成異常によるものではなく、開閉制御にかかわる特定のシグナル伝達が破壊されたことが原因であることが示唆された。現在、昨年度に確立したHEK293細胞を用いたパッチクランプにより、この変異体の原因遺伝子によってコードされるイオン輸送体候補タンパク質の活性評価を進めているところである。液胞は、孔辺細胞細胞質カルシウムイオンの重要な供給元の一つとして考えられている。既知の液胞膜カルシウムイオン輸送体を破壊した変異体より単離した液胞を用いたパッチクランプ解析により、未知の輸送体が媒介するカルシウムイオン輸送活性が液胞膜に存在することが示唆された。そのため現在、gcCNGCやGCMファミリーの液胞膜局在について調査している。本共同研究の国際ネットワークをきっかけにして、新たな共同研究を行う機会を得た。その成果はNature誌に掲載された。気孔閉鎖に必須のアニオンチャネルであるSLAC1の活性化にかかわる新規カルシウムシグナル伝達機構を解明し、論文として発表した。
4: 遅れている
コロナのため、十分な海外滞在時間を確保することができなかった。そのため、延長申請をしているところである。
メールやオンライン会議を利用した共同研究者とのディスカッションを今後も続けていく。無傷の葉を用いたイオンチャネル活性評価系の構築を進めていく。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件)
New Phytologist
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