研究課題/領域番号 |
18KK0429
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
杉本 真也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (60464393)
|
研究期間 (年度) |
2019 – 2022
|
キーワード | アミロイド / 菌体外マトリクス / Tail-specificプロテアーゼ / Prc / ペリプラズム / 作用機序 / ネガティブ・フードバック / 細胞外小胞 |
研究実績の概要 |
Curliと呼ばれる細胞外アミロイド線維は、大腸菌などの腸内細菌科細菌によって産生され、バイオフィルム形成や宿主への定着などに必須なマトリクス成分である。しかし、Curliが適切なタイミング(増殖が停滞した定常期)と場所(菌体外)で作られる仕組みは謎が多い。本研究は、フランス・パスツール研究所のJean-Marc Ghigo博士らとの国際共同研究を実施し、Curliの形成を調節する機構を解明することで、新たなバイオフィルム制御法開発の足がかりを掴むことを目的とする。 2021年度は、昨年度と同様にCOVID-19パンデミックためフランスへの渡航を断念し、国内で実施可能な研究項目を進展させた。具体的には、Curliの主要な成分であるCsgAを分解するペリプラズム局在プロテアーゼPrcが、従来から知られているTail-specificプロテアーゼのようにCsgAのC末端を分解するのではなく、分子内部の複数の部位を分解することを明らかにした。また、ペリプラズムに局在する3つのプロテアーゼ(DegP, DegQ, Prc)の遺伝子を欠損させた場合、ペリプラズムにCsgAが過剰に蓄積することを回避するために、CsgAの発現を転写レベルで低下させるネガティブ・フィードバック機構としてCpxRおよびRcsB経路が機能することを明らかにした。さらに、ペリプラズムにCsgA凝集体が蓄積した場合、細胞外小胞の産生が促され、ペリプラズムに蓄積したCsgA凝集体が細胞外小胞に包み込まれながら菌体外へ排出されることを超解像顕微鏡や電子顕微鏡を用いて明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究を行っているGhigo博士とは、日頃よりメール等により情報交換を行っている。2021年度もCOVID-19パンデミックため渡航を断念し、国内で実施可能な研究内容に注力した。その結果、到達目標の一つであったペリプラズムプロテアーゼPrcのCsgA切断部位を特定することができた。また、ペリプラズムに過剰なCsgAが蓄積することを回避するためのネガティブ・フィードバック機構や細胞外小胞による菌体外への排出経路が存在するという新しい知見を得ることができた。以上のことより、おおむね順調に進展していると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまでに得られた成果の補完データを取得しつつ、論文投稿の準備に注力する。具体的には、細胞外小胞を精製し、その内部に含まれるCsgAがアミロイド線維を形成しているのか、それとも不定形な凝集体を形成しているのかを超薄切片法(透過型電子顕微鏡観察)で明らかにする。また、本研究で見出したCsgA分解プロテアーゼと相同性を示すヒトのタンパク質についても機能解析を行い、アミロイド前駆体タンパク質の機能的保存性あるいは進化に迫る。
|