研究課題
昨年度までに海外共同研究機関のエジンバラ大学化学部へと出向し異分野融合型の先端技術「生体光重合」を習得、日本のがん研究に導入することができた。またポリマーの3次元化(ハイドロゲル化)やスクリーニング用固相化ガラスウェルプレートの作製プロトコルを確立した。最終年度は、光駆動型ポリマー抗がん剤のスクリーニングを行うためのUV照射による重合条件の検討、および生体適合性モノマーによるポリマーライブラリーの構築に取り組んだ。膠芽腫患者由来細胞株(初発2例・再発1例)にUV-A波(365 nm)を照射し、全細胞株において80%以上の生存率を確保できる照射量を特定した。またラジカルの発生に必要な光重合開始剤全6種のうち最も水溶性で毒性が低くより低濃度で励起可能なものを同定した。次に市販のアクリル系モノマー約300種のうちラットLD50値の明らかな53種について、低毒性のモノマー上位24種を抽出した。モノマーおよびIrgacure2959を細胞培養用培地中に添加し、UV-A照射を行って重合効率を算出した。最終的に生体適合性の高い4モノマーと重合効率の高い3モノマーを同定できた。これら7つのモノマー群の組み合わせ・混合比・濃度改変により理論上約5,000種類以上のポリマー・ハイドロゲルライブラリーを構築できることから、今後、がん幹細胞内外で機能する光駆動型ポリマー抗がん剤のスクリーニングを実施する。ポリマーを構成するモノマー低分子は血液脳関門を通過可能と考えられることから、将来的に放射線を併用した腫瘍局所でのポリマー化(抗がん剤化)を目指す。あらゆる中枢神経系疾患へと適応可能で且つ全身性の副作用も少ない革新的な高分子治療コンセプト「放射線重合ハイブリッド療法」の創出へと繋がる重要な成果と考える。
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