研究課題/領域番号 |
18KK0439
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
萩森 政頼 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (40446125)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 内用放射線治療薬剤 / ナノキャリア / 細胞内動態 / フルオロカーボン / トリプルネガティブ乳がん |
研究実績の概要 |
トリプルネガティブ乳がん(Triple Negative Breast Cancer: TNBC)は、乳がんのなかでも悪性度が高く、予後不良であり、現在、有効な治療法は確立されていない。そのため、TNBCの治療に有効な薬剤の開発は急務となっている。代表者らは基課題の研究において、がん細胞選択的な放射性薬剤とそれを搭載できるTNBC標的リポソームによる内用放射線治療薬剤の開発を行っているが、TNBCの治療に真に有効な薬剤へと発展させるには、ナノキャリアの細胞内動態の制御は不可欠であると考えた。そこで、本研究では、フルオロカーボンの超音波ガス溶存能と超音波照射後の発熱による放射線感受性の増大に着目し、計算科学的手法に基づく精密分子設計を駆使することで細胞内動態制御と抗腫瘍効果を両立した内用放射線治療薬剤を開発することを計画した。 開発する薬剤は、含フッ素化合物であり、合成法や機能評価において高い専門性が要求される。そのため、フッ素化界面活性剤の合成とそれによるナノ構造体研究の第一人者であるDr. Krafftを海外共同研究者とした。2019年の6月からフランス共和国ストラスブール大学シャルル・サドロン研究所の海外共同研究者の研究室へ渡航する前に、海外共同研究者とディスカッションを繰り返し行い、情報共有と新規界面活性剤の分子設計と予備検討を国内で行った。渡航後は、まず、設計した分子の合成法の確立を行った。分子に導入するフッ素の数により分子の性質はもとより、その自己組織体の機能および形態は大きく変化する。そのため、TNBC特異的ペプチドを含まない含フッ素ベース脂質を4化合物の合成を行い、高収率で得ることに成功した。また、ラングミュア ブロジェット法を用いて、脂質単独およびナノキャリアの膜成分と共存下における表面吸着量の時間変化を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストラスブール大学シャルル・サドロン研究所への渡航は2019年6月から2020年3月までとし、2019年度はほぼ研究計画に従い研究を遂行した。含フッ素化合物の合成については、海外共同研究者とともに設計・合成を行い、渡航前に計画していた化合物の合成に成功した。また、含フッ素化化合物の基本的な物性評価を行うための手技の獲得に成功するとともに、ラウエ・ランジュヴァン研究所(フランス、グルノーブル市)において中子散乱実験に参加するなど、予定していた以上の経験を積むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に合成した化合物について、基礎的な物性評価を引き続き行うとともに、ナノキャリアとしての製剤化を行う。その後、NQO1あるいはテロメラーゼを標的とした放射性薬剤の製剤化として、放射性物質の取扱いの可能な代表者が所属する研究機関において検討を行う。以上の検討の後に、TNBC特異的ペプチドを含むフッ素化合物を合成し、ナノキャリアとして製剤化したのちに、TNBCでの集積性、温度上昇による放射性感受性、腫瘍移植動物を用いた治療効果の評価を行い、有効性を明らかにする。海外共同研究者とは引き続きディスカッションを密に行い、本研究を推進する。
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