研究課題/領域番号 |
18KK0439
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
萩森 政頼 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (40446125)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2022
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キーワード | 内用放射線治療薬剤 / ナノキャリア / 細胞内動態 / フルオロカーボン / トリプルネガティブ乳がん |
研究実績の概要 |
難治性乳がんの一つであるトリプルネガティブ乳がん(Triple Negative Breast Cancer:TNBC)は悪性度が最も高いサブタイプであり、予後は不良である。現在、TNBCに対する明確な治療標的がないことから、TNBCの治療に資する薬剤の開発は急務となっている。そこで、本研究において代表者らは、がん細胞選択的な放射性薬剤を封入したTNBC標的ナノキャリアの細胞内動態性を厳密にコントールすることによって、TNBCの治療に真に有効な薬剤の開発を計画し、フルオロカーボンの超音波ガス溶存能と超音波照射後の発熱による放射線感受性の増大が期待できる内用放射線治療薬剤を開発することにした。 前年度において、フッ素化ペプチド脂質に含まれるフッ素の数によりフルオラス相互作用が生じ、その結果、安定な単分子膜の形成が可能であることが明らかとなった。そこで、本年度は、ラングミュアブロジェット法を用いて、さらに単分子あるいは生体膜構成脂質であるDPPC共存下におけるフッ素化ペプチド脂質の物性や自己組織化能の詳細な検討を行うべく、海外共同研究者であるDr. Krafftと綿密にディスカッションをしながら研究を進めた。その結果、DPPCの液体膨張膜および液体凝縮膜の両状態において、フッ素基の数は単分子膜の安定性に大きく寄与していることがわかった。また、DPPCおよびDPPE-PEG2000を含むマイクロバブルにおいても、フッ素基は粒子の安定化に寄与していることがわかった。さらに、マイクロバブルの継時的な安定性評価において、フッ素化ペプチド脂質からなるマイクロバブルでは大きな安定性の向上が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フッ素化ペプチド脂質の詳細な物性評価を海外共同研究者とともに進め、フッ素数がナノキャリアの安定性に寄与することを明らかにし、最適なフッ素数を見いだした。得られた成果について、国内の学会で発表し、ショートプレゼンテーション賞として大きな評価を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
フッ素化ペプチド脂質を確立できたことから、トリプルネガティブ乳がんへのリガンドとして機能するMUC16標的指向性ペプチドを修飾したフッ素化ペプチドを構築する。ナノキャリアを作製、インビトロおよびインビボ実験により有用性を評価する。海外共同研究者と綿密に連携し、本研究の完成を目指す。
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