トリプルネガティブ乳がん(Triple Negative Breast Cancer:TNBC)は、乳がんの中で、悪性度が最も高いサブタイプであり、予後は不良である。現在、TNBCに対する明確な治療標的がないことから、TNBCの治療を可能とする薬剤の開発は急務となっている。本研究において、研究代表者らは、TMBCの細胞膜上に発現しているMUC16に着目し、がん細胞選択的な放射性薬剤を封入したMUC16標的ナノキャリアの細胞内動態性を厳密にコントールすることによって、TNBCの治療に真に有効な薬剤の開発を計画し、フルオロカーボンの超音波ガス溶存能と超音波照射後の発熱による放射線感受性の増大が期待できる内用放射線治療薬剤を開発することにした。前年度では、ラングミュアブロジェット法を用いて、フッ素基をペプチド脂質に導入することによって単分子膜が安定化すること、また、それはフッ素基の数に依存することを確認した。本年度は、引き続きラングミュアブロジェット法を用いて、DPPC共存下におけるフッ素化ペプチド脂質ならびにMUC16標的性を持つEVQペプチドを導入したフッ素化ペプチド脂質の物性の評価を行った。また、海外共同研究者であるDr. Krafftの研究室において、ペンダント・ドロップ法を用いてMUC16標的性フッ素化ペプチド脂質の安定性を評価し、フッ素基の単分子膜安定性への寄与を確認した。さらに、バブル製剤において内包する超音波造影ガスであるPFHとの相互作用においてもフルオラス相互作用が生じ、単分子膜が安定化することを見出した。一方、内包する放射性薬剤としては、製剤化が可能なNQO1を標的とする放射性ヨウ素化合物の開発に成功した。今後、動物を用いた検討を行い、TNBCの治療に資するフッ素化バブル型内用放射線治療薬剤としての有用性を示す。
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