近年、3次元大脳発生モデル「大脳オルガノイド」が報告されたが、ヒト多能性幹細胞(ES/iPS)細胞に起因する課題(長い誘導期間、高い培養コスト、神経系以外のジャンク細胞の存在)が山積しており、多検体をハイスループットに解析する創薬スクリーニングへの利用には適していない。本申請課題では基課題で確立した大脳オルガノイド誘導技術を発展させ神経疾患創薬を志向した新たな大脳オルガノイドの作成を目指す。この新規オルガノイドを用いた神経疾患創薬への応用の足がかりとして、最も頻度の高い神経疾患のひとつである「てんかん」に着目した。てんかんは、異常な神経興奮が乱発する神経疾患であり、側頭葉てんかんに関しては、海馬を起点に興奮が広がる事が多い。てんかん発作後のラット海馬では、新生神経細胞が適切な配置を取る事が出来ず、異常な神経興奮を繰り返す事が報告されている。このように異所的な配置を取る新生神経細胞を無力化する方法がてんかん根治には必要となが、脳発達期における3次元的な位置情報が重要となる為、その評価系には、3次元馬発生モデルの作成が必須となる。本年度は、WNTシグナル促進剤CHIR99021とSHHシグナル促進剤を組み合わせることで、PROX1陽性神経細胞を大量に含む海馬オルガノイドを作成することに成功した。今後、この海馬オルガノイドを用いた疾患モデルへの応用を視野に入れた検討を進める予定である。本年度(2021年度)は、新型コロナウイルス蔓延の影響で渡米できずに日本に滞在し上記の検討を行った。
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