近年、3次元大脳発生モデル「大脳オルガノイド」が報告されたが、ヒト多能性幹細胞(ES/iPS)細胞に起因する課題(長い誘導期間、高い培養コスト、神経系以外 のジャンク細胞の存在)が山積しており、多検体をハイスループットに解析する創薬スクリーニングへの利用には適していない。本申請課題では基課題で確立し た大脳オルガノイド誘導技術を発展させ神経疾患創薬を志向した新たな大脳オルガノイドの作成を目指す。この新規オルガノイドを用いた神経疾患創薬への応用 の足がかりとして、最も頻度の高い神経疾患のひとつである「てんかん」に着目した。てんかんは、異常な神経興奮が乱発する神経疾患であり、側頭葉てんかん に関しては、海馬を起点に興奮が広がる事が多い。てんかん発作後のラット海馬では、新生神経細胞が適切な配置を取る事が出来ず、異常な神経興奮を繰り返す 事が報告されている。このように異所的な配置を取る新生神経細胞を無力化する方法がてんかん根治には必要となるが、脳発達期における3次元的な位置情報が重要となる為、その評価系には、3次元馬発生モデルの作成が必須となる。本年度は、作成したオルガノイドを用いて、てんかんやアルツハイマー病との関連が強い睡眠障害について検討を行い、覚醒に関わるオレキシンのアゴニストで処理したオルガノイドにおいて異常な神経興奮の表現型を見出した。本年度(2023年度)は、新型コロナウイルス蔓延の影響もあり、日本に滞在し上記の検討を行った。
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