研究実績の概要 |
Pin1とAktは脳神経系細胞のオートファジー活性維持と細胞生存に必須な因子でありその破綻は、癌やアルツハイマー様の病態を示す。(Liou, Lu Nature 2003; Liu, Lu Nature 2014; Kondo, Lu Nature 2015)興味深いことにその病態は、細胞マイクロセンサーである細胞生一次繊毛の機能異常が原因とされる繊毛病(ciliopathy)の病態と酷似している。さらに、Pin1がclathrin依存的なエンドサイトーシスや一次繊毛形成を正の制御に関与する知見を得ていることから、Pin1やAktおよび、それら関連因子は、細胞膜リン脂質を介した細胞機能制御を司るシグナル伝達の重要な分子群であることが強く示唆される。しかしながら、それら関連因子群の同定や機能解析はまだされておらず、本知見が未熟段階であることもあり、その詳細は明らかになっていない。 本年度では、Pin1やAkt機能操作だけでは説明できない、Pin1-Akt関連因子による細胞膜動態の全貌を明らかにすることを目的とし、それら因子の同定を試みた。患者膵臓癌由来のPDAC2細胞に高く保持されているオートファジー活性は、組織での高い細胞増殖や浸潤能の獲得に重要であると考えられる。オートファジーに必須な生体膜の動態に関わる因子を探索したところ、エンドサイトーシスやリソソーム分解経路に関わるprotein Xを同定することに成功した。またprotein XにはPin1が結合可能なプロリン直接リン酸化サイトSer/Thr-Proが存在し、そのリン酸化サイト依存的なPin1を介したリソソーム分解活性制御機構の存在が明らかとなった。
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