研究課題
プロリル異性化酵素Pin1は、リン酸化Serine/Threonine-Proline配列をもつタンパク基質の活性、細胞内局在、安定性を制御する重要な因子である。その制御破綻は、がんや神経変性疾患などの病態を示すことから、創薬における分子標的として注目されている。我々はこれまでに、原がん遺伝子産物Aktが、オートファジー(自食作用)や細胞から一本だけ形成される細胞性一次繊毛(細胞のマイクロセンサーとして機能する)を介した細胞内シグナル伝達機構を制御することを明らかにした。さらに、その制御破綻が、細胞生存や平面内細胞極性の制御異常につながり細胞のがん化や、や繊毛病の起因になる事を示した。一方、Pin1は、Aktの活性や発現安定化を促し、クラスリン依存的エンドサイトーシスや一次繊毛形成を正に制御することを見出した。現在までに、Pin1が初期エンドソームの形成を促す事、さらにはリソソームにおけるタンパク分解を促進することを明らかにしている。さらに、Pin1-Akt相互作用やシグナル伝達に関連するタンパク因子群が、生体膜リン脂質を介したオートファジー制御に重要な分子である知見を得た。しかしながら、それら関連因子群によるオートファジー制御の分子機構は明らかになっていなかった。我々は最近、Pin1がオートファゴソーム形成時に観察されるLC3顆粒の生成に重要な役割を果たす事を明らかにした。また、生体膜動態制御に関与するPin1結合因子HIP1Rを同定した。HIP1Rは、癌免疫治療の標的であるPD1のリガンドPD-L1をPin1発現量依存的にリソソームにおいて分解することを明らかにした。またヌクレオシド誘導体抗がん剤のGemcitabine受容体ENT1もPin1およびHIP1R発現依存的に分解が進行することを明らかにした。
すべて 2021 2019
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cell
巻: 184(18) ページ: 4753-4771
10.1016/j.cell.2021.07.020