研究課題
網羅的に輸送担体の存在量を解明する手法を開発し、ヒトの血液脳関門において物質輸送に寄与する可能性の高い輸送担体を絞り込んだ。タンパク質存在量(mole、絶対発現量)は、輸送担体の輸送活性の大きさを反映するため、生理的に重要なトランスポーターを絞り込むうえで有用な情報である。スイス連邦工科大学の共同研究チームが樹立した「SWATH法」は、LC-MS/MSを用いて網羅的にペプチドを測定する技術である。内田らは、どんなタンパク質由来のペプチドでも、独自のペプチド選択基準を満たすペプチドならば、LC-MS/MSで測定されるピーク面積からその該当タンパク質の絶対発現量を精度よく推定できることを示した。SWATH法と内田らの結果を融合させ、網羅的に輸送担体タンパク質の存在量(mole)を決定できる方法(qGAP法;quantitative Global Absolute Proteomics)を開発した。検証用の臓器としてマウスの肝を対象とし、複数の膜タンパク質の存在量の決定精度を評価した。確立済みの標的タンパク質絶対定量法(qTAP法;quantitative Targeted Absolute Proteomics)と比較して、2、3倍以内の精度で絶対発現量を決定できることが示された。このqGAP法を用いて、ヒトの血液脳関門の膜画分における輸送担体群の存在量を網羅的に決定することに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
複数の輸送担体候補分子からの絞り込みが課題であったが、新規手法の開発によって合理的に優先順位を決定することができ、輸送担体探索の突破口を拓いたため。ヒト血液脳関門における新規分子の同定に成功したため。
開発した手法を、血液脳関門以外の中枢関門についても適用するとともに、抗体を用いずに一斉の輸送担体の細胞膜局在を解明する手法を開発し、中枢関門の輸送分子機構の解明を加速していく。
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