生体に存在している間葉系幹細胞の性質をより詳細に調べるために、本研究では単一細胞レベルでの遺伝子発現を指標として組織恒常性(組織修復)に関与する細胞集団の特定を目的としている。本年度は、ヒト骨髄細胞を詳細に分類することにより、組織修復および炎症惹起に関与する細胞集団の特定を行った。本年度に行った研究結果として、骨髄に存在する細胞について解析を行い、Lipopolysaccharides (LPS)の刺激により、特定の炎症系因子の分泌が促進される細胞集団を同定した。この集団は組織に存在する間葉系幹細胞亜集団であり、それらの細胞集団から分泌される炎症系因子は、in vivoおよびin vitroにおいて血球系細胞群をミエロイド細胞へ分化を促進することが示唆された。また、マウス・ヒト細胞に対するSingle-Cell RNA Sequence解析を行い、ミエロイド細胞への分化促進に必須の遺伝子の抽出に成功している。単一細胞レベルでの間葉系細胞集団の解析により、造血-間葉間での相互作用を明らかにすることができ、生体内での細胞特性の一部を解明することができた。 間葉系幹細胞は骨髄をはじめ様々な組織に存在し、生体の恒常性に関与していると考えられているが、炎症時における周りの細胞への影響を解析することで、細胞移植における有効な細胞群・治療機序を解明することが可能となった。研究期間全体を通し、ヘテロな集団として扱われている間葉系幹細胞集団を機能的に分類することで、細胞特性と生体内機能を対応させた解析を行うことができた。
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