研究課題
本研究は脳のバイオメカニクスとハイドロダイナミクスの特性を一度の検査で取得して統合的に解析するシステムを確立し,脳腫瘍の診断と頭蓋内環境の非侵襲的モニタリングに役立てることを目的とする.令和元年度は位相コントラストMRIの撮像シーケンスの改良と撮像条件の最適化を行うことによって撮像時間の短縮を図った.具体的には,パラレルイメージング,長方形撮像視野およびsegmented k-space法の併用によって撮像時間を5分の1に短縮した位相コントラストMRIを健常ボランティアにおいて撮像した.次に速度マッピングした位相画像から総脳血流量,総静脈血流量,頭蓋内容積変化,髄液圧力勾配の心周期最大変化量および頭蓋内コンプライアンスを測定し,従来法による測定値と比較することによって本手法の正当性を検証した.その結果,提案手法と従来法の測定値はよく一致し,提案手法によって撮像時間を5分の1に短縮しても測定値への影響が小さいことが判明した.また,脳のバイオメカニクスとハイドロダイナミクスの特性は呼吸の影響を受けて変化すると報告されている.提案手法を使用すれば撮像時間の大幅な短縮により呼吸停止下での撮像が可能であるため,本手法を使用して息止め負荷を与えた際の頭蓋内環境の変化を評価した.その結果,呼吸停止の有無または吸気および呼気停止時において髄液圧力勾配が有意に変化することが判明した.すなわち,呼吸負荷を与えて取得した髄液圧力勾配を比較することによって頭蓋内の圧代償能を評価できる可能性が示唆された.提案手法によって位相コントラストMRIの撮像時間を大幅に短縮することが可能である一方,揺動MRIの撮像には5分程度要するために撮像中の被検者の動きが問題となる.そのため現在は,多断面多時相の揺動MRIデータを短時間で取得し,動きの影響を最小化した撮像シーケンスの開発を進めているところである.
2: おおむね順調に進展している
令和元年度は位相コントラストMRIの撮像シーケンスの改良と撮像条件の最適化を行うことによって撮像時間の短縮を図り,その正当性を検証した.本研究成果について現在論文投稿中であり,概ね予定通り進展したと考える.
令和元年度に引き続き脳のバイオメカニクスとハイドロダイナミクスの特性を一度の検査で取得して統合的に解析するシステムの確立を目指す.今後は揺動MRIの撮像時間を短縮するために,多断面多時相の画像データを一度に取得し,動きの影響を最小化した新しい撮像シーケンスを開発して検証するつもりである.本研究で得られた研究成果を社会に向けて広く発信するために,国際会議を中心とした学会発表や欧文誌への論文投稿を行う.
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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