本研究課題では、赤痢アメーバの感染に必須であるGal/GalNAcレクチンのIglサブユニットと他の病原性因子との分子間相互作用を明らかにするとともに、レクチン活性を有するIglサブユニットの糖鎖認識特異性をCell-based glycan arrayを用いて明らかにすることを目的として研究を進めている。 新型コロナ感染症の世界的な流行が終息に向かい、本年度は4年ぶりに渡米して研究を進めることができた。 赤痢アメーバ培養上清中にIglフラグメントが少なくとも3つの分子種として存在することを見出していたが、本年度はそれらのIglフラグメントが、ウシ血清を含む培地ではエクソソーム画分、無血清培地ではエクソソームではない画分に存在することが明らかとなった。一方で、全長のIgl分子は無血清培地でもエクソソーム画分に存在した。このことは、赤痢アメーバ細胞膜に存在するIglが切出され、ウシ血清由来エクソソームに取り込まれる、あるいはウシ血清由来エクソソーム上の分子に結合することを示唆している。またレクチンのHglサブユニットも同様の挙動を示すことから、赤痢アメーバ由来エクソソームには全長IglおよびHglが存在し、赤痢アメーバ細胞表面から切り出されたフラグメントは何かしらの機構により、培地中に含まれるウシ血清由来エクソソームに存在すると考えられる。 Cell-based glycan arrayを用いたIglの糖鎖認識特異性の解明に関しては、Iglの非特異的吸着が強く認められたため、糖鎖ナノ粒子を用いた実験に切り替えて研究を進めている。Iglが糖鎖ナノ粒子を凝集せず、単量体として糖鎖に結合している可能性が出てきたため、その可能性を確認している段階である。 さらに赤痢アメーバレクチンが認識するガラクトースを含む単糖が赤痢アメーバの増殖に与える影響を調べ、誌上発表した。
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