生体は容易にビタミン欠乏に陥らぬよう、ビタミンを細胞内にプールする機構が備わっていると考えられている。そのプール機構の実体は、細胞内小器官であるlysosome内への輸送過程を経て、細胞内に蓄積している可能性が考えられている。これまでに、その輸送過程を担う分子実体のひとつとして、水溶性ビタミンであるthiamine/vitamin B1やpyridoxine/vitamin B6を輸送するlysosomal multivitamin transporter 1(LMVT1)の同定に成功し、その詳細な機能解析を行った。その結果、LEUT1のpyridoxine輸送はプロトンとの共輸送を駆動力としていたため、リソソーム内にプールされたpyridoxineを細胞質内に供給している役割を担っていることが示唆された。また、LMVT1の基質認識性を調べていくと、LMVT1はビタミン以外の物質(薬物・生理活性物質)も輸送基質とすることが分かった。このことから、LMVT1は薬物動態や多様な生理機能の調節にも関与している可能性が見出された。 LMVT1のビタミン輸送機構に関する研究に付随して、pyridoxineの体内動態を担う新規トランスポーターの同定にも成功した。カリフォルニア大学アーバイン校において、これらトランスポーターの生理的意義について検討を行い、着実に研究成果を挙げることが出来た。本研究を通じて、pyridoxineに限らず、多様なビタミン動態に関しても共同研究を継続する土台を築くことが出来た。
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