研究課題/領域番号 |
18KK0454
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
城戸 康年 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90511395)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | ヒトアフリカトリパノソーマ症 / 人獣共通感染症 / アフリカ睡眠病 / アスコフラノン / 顧みられない熱帯病 |
研究実績の概要 |
アフリカトリパノソーマ症は寄生性原虫Trypanosoma bruceiを病原体とする人獣共通感染症であり、ヒトに生じるアフリカ睡眠病(Human African Trypanosomiasis; HAT)は致死性疾患である。HATは血流のみに感染が限局している急性期と、数カ月から数年の経過で中枢神経へ進展する慢性期の2病期に大別されるが、ヒト慢性期の起因原虫はT. brucei gambienseという亜種である。しかし、家畜伝染病予防法の規制により日本で入手できるT.b.gambienseは限られ、マウスへの感受性が悪く、他の動物種を用いた実験も不可能である。 2020年度には新型コロナウイルス感染症の流行拡大のため、研究代表者らはコンゴ民主共和国への渡航は出来なかったが、2019年度の本国際共同研究で実施したMastomys natalensis (African ratと総称されるサブ・サハラの固有種であり実験動物として供される) を用いた慢性期感染モデルの再現性の確認と解析を海外共同研究者と実施した。この慢性期モデルでは、数日ごとに末梢血中のトリパノソーマ原虫が出現と消失を繰り返し、慢性期の病態が完成し、実際に中枢神経へ病原体が浸潤することが確認できた。これはヒトの慢性期における病態と極めて類似しており、この感染実験系は良好な慢性期病態モデルであることがわかった。 2020年度は、T.bruceiの急性期モデルに効果を示すアスコフラノンおよびその誘導体を用いて、慢性期モデルでも治療可能かどうかを検証したところ、急性期モデルでの効果と同等の効果が得られることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度には新型コロナウイルス感染症の流行拡大のため、研究代表者らはコンゴ民主共和国への渡航は出来なかったため
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も引き続き、中枢神経感染動物モデルに対する治療実験を実施する。感染動物の生存解析のみならず、組織標本により臓器浸潤の程度を解析し、病態の解明を進める。同時に得られる血清から血清メタボローム解析を実施し、中枢神経感染期の分子マーカー探索を行う。流行地における本解析を実施するために、現地での質量分析装置の設置準備を行う。 2021年度も、新型コロナウイルス感染症の影響がどこまで続くか不透明であり、渡航の予定の目途が立たないことが最大の懸案事項である。
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