研究課題
ヒトアフリカトリパノソーマ症(HAT)はアフリカ大陸で甚大な被害を与える致死性寄生虫感染症であり、撲滅へ向けた新規薬剤開発が注目されている。申請者らは、Trypanosoma bruceiが宿主血流中での生存に必須なTrypanosome alternative oxidase (TAO)と、その特異的阻害剤アスコフラノン(AF)を報告し、T. brucei感染マウスの治療実験に成功した。一方、AFと誘導体が十分量えられず、薬理学的評価が停滞している。基課題では、これまでにAF生合成経路解明と、AFより低濃度で生合成経路のAF前駆体による感染マウス治療に成功した。HATは血流のみに感染が限局している急性期と、数カ月から数年の経過で中枢神経へ進展する慢性期の2病期に大別されるが、ヒト慢性期の起因原虫はT. brucei gambienseという亜種である。問題となっているヒト慢性期への有効性を評価するため、本国際共同研究では、Mastomys natalensis (African rat) を用いた慢性期モデルを用いて、慢性期の病態解析およびAF誘導体を用いた慢性期治療実験およびヒト臨床検体を用いてヒト慢性期の分子マーカー探索を実施した。その結果、ヒト慢性期疾患を模倣した動物モデルを確立することに成功し、AFによる治療実験では、臨床分離株を用いた慢性期においてもAFが有効であることを証明することができた。さらに、これまでグリセロール併用によるAFの増感が知られていたが、グリセロールが原虫エネルギー代謝を変化させることで感受性が高まったことが明らかとなった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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