研究課題
ビタミンKは、血液凝固や骨形成に重要であり、凝血薬や骨粗鬆症治療薬に臨床応用されている。これらの薬理作用以外にもビタミンKは“抗腫瘍作用”と“がん再発予防作用”の2つの作用を有することが報告されているが、その詳細なメカニズムは明らかでない。これまでの研究過程において、ビタミンKを活性化型に変換する律速酵素UBIAD1が、GTPエネルギー代謝により制御されていることを見出した。がんGTP研究の第一人者である米国シンシナティ大学のDr. Atsuo T.Sasakiと、ディスカッションを行った。驚くことに、Sasaki研究室で発見されたGTPセンサーPI5P4Kβの変異細胞において、UBIAD1の発現制御が変動していることがわかった。そこで、本国際共同研究では、「GTP代謝センサーを介したビタミンK代謝制御機構の解明とがん治療への応用」を目指し、新たながん治療や予防への貢献を志す。 現在までに報告者は、共同研究の一環でF205L変異体したがん細胞におけるビタミンK代謝関連酵素の遺伝子発現をCAGE-seq解析よりDr.Sasakiに評価頂き、F205L変異体では、UBIAD1遺伝子の発現量が経時的に著しく低下した。このような結果より、がんにおいてビタミンK代謝とGTP代謝センサーには何らかの関連があることが示唆された。報告者は2021年3月27日に帰国後、アメリカで採取したサンプルの解析や慶應義塾大学との共同研究より代謝物の網羅的解析を行っており本年中の論文投稿を目指している。
3: やや遅れている
報告者はこれまでに行ったF205L変異マウスの樹立およびその表現型解析を進めている。特に肝臓を中心とした様々な解析を行っているが、代謝物の網羅的解析に想定より時間を要している。また、帰国後学長補佐となり、研究以外に割く時間も多くなったため。
今後は、F205L変異マウスと野生型マウスおよびPI5P4Kβノックアウトマウスを用いて、表現型解析を引き続き行う。また、現在認められている肝臓の表現型を明らかなものとして、本年内に論文の投稿を目指す。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
The Journal of Biochemistry
巻: 170 ページ: 699~711
10.1093/jb/mvab077