研究課題/領域番号 |
18KK0461
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三木 健嗣 京都大学, iPS細胞研究所, 特定助教 (10772759)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 3D心筋組織 / 心内膜細胞 / 脱細胞化マトリックス / 心筋細胞 / 心外膜細胞 / 3Dプリンター |
研究実績の概要 |
9月から渡航先研究室での研究を開始している。本年度は脱細胞化マトリックス作製法の習得及び、心筋細胞以外の心臓を構成する細胞種への分化誘導の検討、それらを用いた3次元組織の構築を検討した。また、3次元組織構築に関しては、脱細胞化組織だけでなく3Dプリンターやその他のtissue engineeringの技術を用いて3次元組織の構築を試みた。 心臓の脱細胞化マトリックス組織はラット心臓を用いて実施し、還流法による脱細胞化法を習得した。分化誘導に関しては、心筋細胞、心外膜細胞を渡航先のhiPS細胞株で効率良く分化することを確認し、更にこれまで効率的な分化誘導法が報告されていない心内膜細胞への分化誘導を検討した。私が開発した心内膜分化方法により得られたCD31陽性細胞は、conventionalな内皮細胞分化により得られるCD31陽性細胞と比べて、心内膜細胞マーカーであるNFATC1の発現が有意に高く、さらに、EMTにより間葉系細胞へ分化することが確認できた。心内膜細胞のcharacterizationは今後も検討を進めるが、心筋細胞、心外膜細胞、心内膜細胞とも90%以上の効率で10^7以上の細胞数を得られる方法を確立した。3次元組織構築においては、3Dバイオプリンターの条件検討を行い、FRESH法を改良して1cm角程度の複数層からなる心筋組織を構築することに成功した。またシリコンチューブを用いたチューブ上での組織構築も検討しており、これにより薄い1層の心筋組織を構築することも確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定としては、心筋細胞の他に内皮細胞、平滑筋細胞、心筋線維芽細胞を用いて組織構築を行うと予定していたが、心臓内の内皮細胞は主に心内膜細胞に由来すること、心筋線維芽細胞と平滑筋細胞は心外膜細胞に由来することから、心内膜細胞と心外膜細胞を用いて組織構築を行うことにした。心内膜細胞への分化誘導はこれまで効率的な分化誘導の報告がなく新たな挑戦であったが、NFATC1を高発現するCD31陽性細胞を高効率で取得することに成功し、心内膜細胞としての機能も現在一部ではあるが確認できた。心外膜細胞はWT1陽性細胞を95%以上で分化できることに成功し、心筋線維芽細胞及び平滑筋細胞への分化誘導も確認できた。これらのことより、細胞種に関しては予定よりも進展していると考えている。 3次元組織構築に関しては脱細胞マトリックスに細胞を再充填化させるのみの予定あったが、スループットの改善も考慮し、3Dバイオプリンターやその他のtissue engineering技術による組織構築も行った。再充填化に関しては培養コストがかなりかかるため数回しか実施できていないが、3Dバイオプリンター では1cm角の大きな組織を構築することができており組織構築の点でも概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は上記の細胞種を用いた3次元心筋組織のcharacterization及びHCM患者由来のhiPS細胞を用いた心筋組織の構築を検討する。 3次元心筋組織のcharacterizationとしては、心筋層内に心内膜細胞由来のCD31陽性細胞のmigration、心外膜細胞由来の心筋線維芽細胞及び平滑筋細胞のmigratioを確認し、CD31陽性細胞や平滑筋細胞がlumen構造を構築するかを確認する。更にこれらの心筋組織の成熟度が、心筋細胞のみを用いた場合に比べて組織学的に亢進するかを検討する。また、脱細胞化マトリックスへの細胞の再充填も引き続き行い、これらの心筋組織と3Dバイオプリンター等による心筋組織との違いも検討していく予定である。 一番の懸念点は、3月中旬からコロナウイルスによる在宅勤務が続いているため実験が中断しており、いつ再開するかの目処が立っていない点である(5月中旬時点)。
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