本年度は、脱細胞化マトリックス組織へのhiPSC由来細胞の充填及びその解析、バイオプリンターを用いた3次元組織の構築及びその解析を行った。 ラット脱細胞化マトリックス組織への細胞の充填には、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞、NFATC1陽性心内膜細胞、WT1陽性心外膜細胞を用い、投与方法及び細胞数の検討、充填組織の組織学的解析を行った。現在論文執筆中のため詳細な方法や数値は記載できないが、目視下で拍動を確認できる心臓組織を構築することに成功した。組織学的解析により、左心室壁及び右心室壁の大部分にヒトiPS細胞由来の心筋細胞や心外膜由来の細胞、心内膜細胞由来の血管内皮細胞が充填されていることも確認できた。更に複数の細胞種が充填された心筋細胞は心筋細胞単独での充填に比して、サルコメア長や遺伝子発現プロファイル等成熟が亢進していることが確認できた。現在はこれらのポンプ機能の解析及び心筋症変異の入ったヒトiPS細胞を用いて同様のアプローチを行い、3次元の病態モデル構築を行っている。 バイオプリンターを用いた3次元組織の構築では、ヒトの心室筋組織は心外膜層、心筋層、心内膜層の3層構造から成っているため、このような組織をin vitroで構築することを試みた。その結果、縦15mm、横25mm、厚さ4mmの3層組織を構築することに成功し、更に組織内の細胞を長期的に生存させるため、perfusion培養可能な組織及び培養系の構築に成功した。こちらの研究に関しても現在心筋症変異の入ったヒトiPS細胞を用いて高度な心筋組織の構築を試みている。 本年度はCovid-19の影響による数ヶ月に及ぶロックダウンのため、実験自体が全く実施できない期間が長く続いたが、当初予定していなかったバイオプリンター での心筋組織構築も達成することができた。
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