レプチンは脂肪組織より循環血液中に分泌され、主に脳の神経細胞に作用し、抗肥満作用を惹起するタンパク質である。一方、肥満患者においてはレプチンが効きにくくなる状態、すなわちレプチン抵抗性の状態であることが報告されており、レプチン抵抗性のメカニズムを明らかにすることが課題となっている。私たちは、現在までの研究の結果、レプチン抵抗性のメカニズムの一部に小胞体ストレスが関わる可能性を示してきた。さらに、神経細胞におけるレプチンシグナルに対して、脳グリア細胞も一部関わる可能性を示してきた。そこで、本研究では小胞体ストレスやグリア由来分泌因子によるレプチンシグナルの分子メカニズムを特に受容体レベルで検証した。レプチン抵抗性に関わるグリア由来因子の候補分子であるアデノシン処理後、bioluminescence resonance energy transfer(BRET)技術を用いたレプチン受容体のコンフォーメーショナルな変化を検討した。検討の結果、アデノシンはレプチン受容体のBRET活性に影響を及ぼさないことが明らかになった。したがって、アデノシンはレプチン受容体以降の下流因子に作用してレプチン抵抗性を示す可能性が示された。そこで、今後レプチン受容体以降の下流因子としてどのような因子がアデノシンによるレプチン抵抗性に関わってるか検討を進めることで、アデノシンによるレプチン抵抗性形成機構の分子メカニズムを明らかにする。
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