研究課題/領域番号 |
18KK0464
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
井澤 俊 岡山大学, 大学病院, 講師 (30380017)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 破骨細胞 / エピゲノム / RANKL / 顎顔面領域稀少性遺伝子疾患 / 骨細胞 |
研究実績の概要 |
現在実施中の基課題では破骨細胞前駆細胞を用いて解析を行った。その結果ASXL1はRANKL刺激により発現が上昇する。ASXL1のノックダウンによってH3K27me3の脱メチル化が減少することで破骨細胞の分化が促進することが判明し、さらにASXL1ノックダウンによりJmjd3の約40倍の発現上昇を認めた。さらに、本国際共同研究ではASXL1ノックダウンマウス破骨細胞へのJmjd3の干渉によるNFATc1転写活性をルシフェラーゼアッセイ、クロマチン免疫沈降、DNA転写結合アッセイなどによりエピジェネティックな解析を実施するとともにNFATc1の遺伝子過剰発現系を実施し破骨細胞のレスキューがみられることも併せて多角的な予備実験データを得ることができた。一般的にポリコーム群は、基課題にて解析を行っているASXL1、ASXL2とBaP1からなるPR-DUB複合体と、さらにヒストンH3の27番目のLysをトリメチル化するタンパク複合体PRC2(polycomb repressive complex 2)とヒストンH2Aの119番目のLysをユビキチン化する活性を持つPRC1のふたつの複合体の共同を介して、多くの分化関連遺伝子群に結合し、転写抑制に寄与する。しかしながら、ポリコーム群がどのように標的遺伝子群を認識し、それらの転写抑制に寄与するのか明らかにされていない。そこで、本国際共同研究においてマクロファージをRANKL刺激後のサンプルのエピゲノム関連PCRアレイを実施したところ、PRC2複合体の一つであるEzh2などが破骨細胞分化に重要な役割を果たしている候補遺伝子として挙がってきた。さらに、Ezh2ノックダウンにより破骨細胞の著明な減少を確認し、骨吸収能の抑制、アクチンリングの破綻、MAPK及びNF-kBを中心としたRANKLシグナルの減弱がみられた。またオステオイムノロジーの観点からT細胞の分化に関連した分子にも注目し、一方でM-CSFシグナルには差がみられなかったことより、RANK/RANKLシグナルを基軸としたさらなる解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に国際共同研究を遂行するにあたって受け入れていただいた米国ワシントン大学医学部のSteven L. Teitelbaum教授、Wei Zou先生とは帰国後も本国際共同研究のための打ち合わせをメールなどで行っている。Wei Zou先生には破骨細胞におけるゲノムワイド関連解析(GWAS)、各種ベクター構築、ChIPアッセイや最新のシングルセルRNAシークエンスなどエピジェネティクス研究について継続して指導を受けている。Steven L. Teitelbaum教授とは本国際共同研究における成果をより質の高い雑誌にアクセプトされるように論文ドラフト作成後に推敲の引き受けを了承いただいている。現在までに予備実験データを少しずつ積み重ねてきており研究成果の学会発表および論文掲載の準備を進めている段階であることから、概ね順調に進展していると考えているがcovid-19の状況により今年度の渡米時期に関してはより慎重な判断が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
また、オステオイムノロジーの観点からT細胞の分化に関連したエピゲノム分子にも注目し、一方でEzh2ノックダウンによりマクロファージのM-CSFシグナルには差がみられなかったことより、RANK/RANKLシグナルを基軸としたさらなる解析を実施していく予定である。本国際共同研究はポリコーム群遺伝子による破骨細胞制御とその破綻によるBohring-Opitz(BOP)症候群や関節リウマチ病態発症のエピゲノムについてPR-DUB複合体、PRC1複合体を中心としたそれぞれ単独でなされてきた従来の多くの研究とは違い、基課題を飛躍的に発展させることを目指し、骨免疫学全体の構図を考える上で極めて重要な研究へと推進させる予定である。創薬などをアウトプットとして念頭にし、以上の実験内容を遂行する上ではハード、ソフトの両面ともに現在のところ問題はない。
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