これまでInsulin-like growth factor (IGF)シグナルがReceptor activator NF-κB ligand (RANKL)シグナルを介した破骨細胞形成においても重要であることが報告されている。しかし、破骨細胞におけるInsulin-like growth factor-I binding protein (IGFBP)による破骨細胞分化や骨代謝への詳細な影響については未だ不明な点が多いのが現状である。そこで今回、IGFBPシグナルを介した破骨細胞の形成能を解析した。 まず破骨細胞分化ステージでのIGFBPの役割を解析するために、骨髄マクロファージをRANKLとM-CSFとで刺激後48時間でIGFBPの著しい発現上昇がみられ、さらに初期の分化マーカーNFATc1と発現パターンが類似していることが明らかとなった。次にIGFBP遺伝子を野生型マウスのマウス破骨細胞に過剰発現させたところ、破骨細胞形成の著しい亢進を認めた。また、ピットアッセイの結果より骨吸収の有意な増加を認めた。一方でIGFBPのノックダウンによってコントロールと比較しTRAP陽性破骨細胞数の低下が認められた。 さらに、IGFBPノックダウンによってNFATc1、Cathepsin K、integrin β3などの発現低下を認めた。一方で、RANKやアダプター蛋白TRAF6の発現に変化を認めなかった。また、ミトコンドリアマーカー分画であるCⅢ、CIV-MTCO1はIGFBPノックダウンにおいては発現の低下がみられ、CⅡ-SDHBやCⅠの発現パターンはコントロールと比較し、変化はみられなかった。破骨細胞への分化・活性化の過程でIGFBPが極めて重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究成果は米国骨代謝学会、ゴードンリサーチカンファレンス(Bone and Teeth)で発表を行った。ゴードンリサーチカンファレンスの後に米国セントルイスのワシントン大学に直接出向いて破骨細胞に関する研究を行い、研究論文ドラフトの推敲を受け入れ先の先生と連携して実施した。
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