研究課題/領域番号 |
18KT0005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
池田 光穂 大阪大学, COデザインセンター, 教授 (40211718)
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研究分担者 |
山崎 幸治 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 准教授 (10451395)
瀬口 典子 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10642093)
辻 康夫 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (20197685)
關 雄二 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (50163093)
太田 好信 九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (60203808)
加藤 博文 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 教授 (60333580)
石垣 直 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (60582153)
細川 弘明 京都精華大学, 人文学部, 教授 (70165554)
丹菊 逸治 北海道大学, アイヌ・先住民研究センター, 准教授 (80397009)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 先住民 / 博物館・大学 / 言語・文化復興運動 / 文化遺産返還運動 / 遺骨副葬品返還運動 / 先住民学・先住民教育 / ポストコロニアリズム |
研究実績の概要 |
本研究は、日本と海外を研究対象地域として、先住民が実践している(1)「遺骨や副葬品等の返還運動」、博物館における先住民による文化提示の際の公開禁止や返還要求といった(2)「文化復興運動」、および先住民アイデンティティの復興のシンボルとなった(3)「先住民言語教育運動」という、3つのテーマの現状を探る。この現象は、世界の均質化が引き起こすグローバル化現象とは異なり、グローバル化現象が先住民をして自らのアイデンティティを再定義し、国民国家が求める同化政策に抗して、言語的文化的独自性とその多様性を担保しつつ、国家との連携や和解を求める動きとして捉えられる。グローバル文脈のなかで多数派や抑圧者を指し示す「名指し」行為のエージェンシーとして先住民を捉えれば、国家領域のなかで自らの権利回復をめざす少数集団と[多数派]の新しい連携関係の形態も可能となる。そこでは実践者としての研究者が先住民との研究倫理的枠組みも当然変化するはずである。先住民による先住民ための学としての新しい「先住民学」の教育の場をデザインできるようなカリキュラム開発とそれを実装可能にするような大学院教育課程のモデルつくりも可能になるはずだ。グローバルな文脈の中で多数派を「名指す」という実践を把握するために文献的資料、各種メディアによる二次情報資料ならびにフィールドワーク調査に基づく一次資料の収集をおこなう。(1)「遺骨や副葬品等の返還運動」、(2)「文化復興運動」、(3)「先住民言語教育運動」に着目し、このような情報を収集する。最終的には、人類学を含めた人文社会科学の脱植民地化のためのプロジェクトとして本研究課題を位置づけ、個々の研究プロジェクトを総合する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、文化人類学や博物館学の観点から、先住民(先住民族)からの遺骨返還要求が提起する倫理的問題に、遺骨を直接扱ってはこなかった人類学の下位領域(文化人類学や言語学など)がどう「当事者」としてこの問題に応えるかを、シンポジムや研究発表などを通して考えた(太田・池田)。また米国のモンタナ州の2つの大学とハワイ州の大学にて、言語復興運動の聞き取りや、北米先住民遺骨副葬品返還法(NAGPRA)に関する情報収集や、現地大学生とのワークショップを通して意見交換をした(瀬口)。研究倫理指針に関して海外における事例の資料収集を行うとともに、いくつかの研究会においてアイヌ民族あるいは台湾先住民の遺骨や文化遺産返還に関する事例、それを可能にする政治理論、さらには言語運動に関する報告したり参加している(池田、山崎、辻、石垣)。ヨーロッパならびにオセアニアにおけるアイヌ遺骨の保管状況や文化遺産返還、あるいは言語学についての資料調査を実施したり、成果の一部を学会や研究集会で報告した(加藤、丹菊、細川、石垣)。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定にあるように、[担当者名]、(1)-(a)遺骨等返還運動に関連する学問と先住民からの要求の位相[池田・瀬口・加藤・丹菊・辻]、(2)-(b)言語復興運動と先住民の社会的地位[太田]、(2)-(c)博物館展示をめぐる政治的交渉[辻・山崎]、(2)-(d)博物館における文化を表象する権利の動き[石垣]、(2)-(e)先史考古学と近隣コミュニティの関係[関]、(3)-(f)アイヌ言語復興運動の現状と課題[丹菊]、(3)-(g)博物館における言語提示とその継承[細川]、(3)-(h)言語教育運動と文化復興運動との接続[石垣・太田]で今後とも遂行する。本年度の末には、研究会をもち、参加者には中間報告を求め、総合討論し、とりまとめにむけて調整する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
設置年度の予算執行期間であり、計画していた海外調査計画を断念したり、調査期間の短縮ため、旅費充当分に残額が生じた。研究計画当初で物品経費の出費が多く、予定していた旅費を他の財源(運営費交付金)等で補填して研究を遂行したなどの理由で、次年度使用額が発生した。次年度において海外調査、海外での学会発表(パネル発表)計画があり、そのために新年度予算にあわせて利用する計画であるので、概ね許容可能な予算執行の範囲であると判断したため。
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備考 |
2004年から運営している「先住民の世界」(http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/041127indigenous.html)からリンクをたどれるようにしている。
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