研究課題/領域番号 |
18KT0007
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
張 峻屹 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (20284169)
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研究分担者 |
瀬谷 創 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (20584296)
友澤 和夫 広島大学, 文学研究科, 教授 (40227640)
清水 哲夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (40272679)
藤原 章正 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (50181409)
布施 正暁 広島大学, 工学研究科, 准教授 (70415743)
力石 真 広島大学, 国際協力研究科, 准教授 (90585845)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 国境まち / フィールド調査 / アンケート調査 / SWOT分析 / まちづくり戦略 / 居住者 / 観光客 / 中小企業 |
研究実績の概要 |
途上国の国境まちは条件不利地域に属する(weaknesses: W)が、地理的位置から潜在的発展力はある(strengths: S)。しかし、国境まちを取り巻く外部環境には発展機会(opportunities: O)があれば、脅威(threats: T)もある。このような考えを念頭に入れ、2019年3月~4月と9月~10月の2回のフィールド調査を踏まえてアンケート調査内容を決定した。そして、2019年9月~10月に、ラオス・ベトナム・ミャンマー・中国の5つの国境まちで調査を実施した。その結果、2567人から有効なデータを回収できた。居住者は1242人で最も多く、中小企業経営者は213人、中小企業被雇用者は540人、訪問者は240人、トラックドライバーは332人であった。国境まちを対象とするこのような多様なサンプルを回収できたこと自体は極めて価値の高い研究成果である。
分析の結果から様々な成果を得たが、最も特徴的な結論は、S,W,O,Tという4つの分析次元から国境まちの実情に合ったまちづくり戦略を暫定的にまとめることができた。具体的には、Lao Bao(ベトナムのまちでラオスとの国境に接する)とSavannakhet(ラオスのまちでタイに接する)は積極攻勢型戦略(例:豊かな天然資源と伝統文化を活用した観光が効果的)が、Dansavan(ラオスのまちでベトナムと接すする)は弱点強化戦略(例:人口問題と廃棄物処理など環境問題に注意を払う必要がある)が、Myawaddy(ミャンマーのまちでタイに接する)は防衛・撤退型戦略(例:外国人観光客の増加による地域文化の損失を如何に回避できるかに注意する必要がある)、Ruili(中国のまちでミャンマーに接する)は差別化戦略(例:より多くの資本と人材を投資して経済構造を最適化し、生態系を保護する)が、それぞれ必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来2020年1月から3月にかけて、完成していない調査を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大のせいでメコン川流域の国境まちに行けず、データ収集を終えることができない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今まで収集してきたアンケート調査データ及び二次的データを用いて分析を続ける。しばらく現地に行けそうにないことを考えて、オンラインによる専門家調査を実施できないかを検討する。(2)リモートセンシング技術とGIS技術を駆使し、国際比較の視点から、国境まちの変遷(土地利用や形態)を時系列的に追跡し、今後の国境まちの発展のあり方を研究する。(3)トラック調査結果を分析し、国境まちを通じての国家間の貿易実態を把握し、要因分析を行う。これらの結果を踏まえて、国境を跨る手続きや国境へのアクセスなどの改善効果を評価する。(4)中小企業、観光客や来訪者のデータを分析し、国境地域の企業の経営実態、経営者意識、外部者の行動や意見などを反映した国境まちのあり方を研究する。(5)国境まちの文化的遺伝子を探るため、環境心理学アプローチに基づき設計したアンケート調査、現地での居住者ヒアリング調査を踏まえて、知覚プロセスを反映し、国境まちのアイデンティティや愛着などから、国境まちのプレイスメイキングのあり方を検討する。
上記の分析結果を反映し、多様なコネクティビティ(観光、交通、貿易、資源、環境、グローバル社会、国境を越えたソーシャルネットワークなどからみた多様な連帯関係など)を有する国境横断型まちづくりの視点からアジア途上国のための国境まちのあるべき姿を提示すると同時に、それを実現するための方法論を開発する。これらを以て、アジア特有のグローバル・イシューのための「グローバル・アプローチ」(文化的遺伝子に関する研究アプローチ、グローバル・ガバナンス、国境まちならではの学際型・部門横断型アプローチなどから構成される)を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1件目の残額について、年度別配分額が少なく最終年度においてまとめて使ったほうが研究成果を出しやすいと判断し、繰り越しを決定した。もう1件は今年の研究作業を計画どおりの金額より少ない金額で進めることができたので、残りを次年度研究のために繰り越した。
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