研究課題/領域番号 |
18KT0009
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
冨永 靖敬 法政大学, 経済学部, 准教授 (40779188)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 内戦 / 自然災害 / 計量分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、武力紛争継続地域と自然災害発生地域が重複しているという観察のもと、自然災害が武力紛争の帰趨に如何なる影響を与えるのかを分析することを目的としている。特に、災害に直面する武装組織への影響が組織によって異なる点に着目し、自然災害という外生的なショックに頑強な組織、脆弱な組織を分ける要因、そのメカニズムを明らかにしようと試みる。
2018年度は、研究計画通り、武装組織の資源構造に焦点を当てた議論の構築、また、仮説の検証に必要なデータの構築・分析を行った。まず、議論の点では、武装組織継続のために天然資源の「採取の方法」に着目し、特定の資源に継続的な関与を行うタイプの資源採取と、よりアドホックな資源採取の方法に分類した。その上で、前者は継続的な資源収入を得ることができる点で強固な組織を構築可能な一方で、災害による資源そのものの破壊には脆弱であり、むしろ脆弱性が高いと議論している。一方で、資源の密輸など、よりアドホックな資源採取に依存する組織の場合、安定した収入は得難い一方で、不安定な状況に対する慣れがむしろ災害などの外生的なショックには頑強な性質を持つと考えている。
2018年度は、国際災害データベースを購読し、国レベルの災害情報、そして既存の紛争データベース(Non-state Actor Dataset)を利用し、国-武装勢力のダイアッドデータを構築し、上記の議論の統計的分析を行った。検証の結果、現段階では本研究の仮説を支持する分析結果を得ており、本結果については、2019年3月に開催されたワークショップ、国際学会でも発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主課題に対して既に議論・仮説の構築を終えており、また予備的なデータ分析も行っており、論文の形で一本を書き終えている点で研究計画に対して非常に順調に進んでいると言える。一方で、当初の研究計画では、データ構築の方法としてGDELTを用いたサブナショナルなレベルの分析を検討しており、またその補助のためにリサーチ・アシスタントを採用する予定であった。しかし、本課題の申請時と採択時で申請者の所属先が代わり、立地面、そして新しい環境に変わったことで人員を募集・採用することが難しい状況に陥っている。その点で更なる研究課題の分析のためのデータ構築が遅れており、「おおむね」順調という評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
学会等における発表に際し、自然災害に対する武装勢力とそれと戦う国家の影響の違いを考慮する必要があるとのコメントを頂いている。特に、国家は武装勢力がコントロールする地域よりも広大な地域を統括しており、その意味で災害に直面する確率が高い。したがって、面積の違い・災害の発生のパターンなどを考慮してマッチング法を援用し、より正確に武装勢力に対する災害の影響を分析するよう試みる。そのために、2019年度には因果効果分析の最先端を学ぶためのワークショップの参加に加え、データの構築についても引き続き人員の確保ならびにデータ収集の自動化を行い、対応したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の進捗度でも説明した通り、本研究課題の申請時と採択時で申請者の所属先が代わり、新所属先の立地面から申請時に利用可能であったネットワークを利用することが困難となり、リサーチアシスタントなどの人員を採用することができなかった。その点で人件費の支出がゼロとなり、またそれに付随して発生する予定であった物品費なども大きく減少し、次年度使用額が発生した。
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