研究課題/領域番号 |
18KT0010
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
中島 謙一 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (90400457)
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研究分担者 |
村上 進亮 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40414388)
松八重 一代 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (50374997)
山野 博哉 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究センター長 (60332243)
南齋 規介 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 室長 (80391134)
山末 英嗣 立命館大学, 理工学部, 教授 (90324673)
富田 誠 東海大学, 教養学部, 准教授 (50631826)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 物質フロー / サプライチェーン / 衛星画像解析 / 資源 / 土地改変 / 関与物質総量 / LCA / 産業連関分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、『影響の原因者と影響を被る主体との空間的乖離』の解明と視覚化、資源利用の持続可能性の強化の為の管理方策の検討に取り組み、2019年度は、以下の研究実績を得た。 はじめに、リソースロジスティクスの解析について、国際貿易に伴う鉄・銅、ニッケルの国際マテリアルフローデータの年次更新(2016年までの推計を完了)を実施した。その結果、アジア地域の需給拡大に伴って、フロー量・見掛け消費量・ストック量のいずれも2010年より増大していること、その結果、特定の国・地域への集中が顕著になっていると得られた。また、リン・窒素等のフットプリント解析を実施した。 次に、採掘等に起因する地球改変量の把握として、衛星画像を用いて様々な土地被覆タイプ(裸地帯・農地帯・草本植生帯・森林帯)に位置する採掘領域の面積推定手法を検討した。衛星画像解析にあたっては,採掘領域における雲マスクの修正方法および地形効果による推定誤差の低減方法について議論した。また、TMRを計測指標として、鉱山別の特性情報等をもとに、鉄、銅、ニッケルおよび石炭等のエネルギー資源の生産に関わる採掘活動量を定量化した。定量化にあたっては鉱山毎の品位、剥土比情報を用い、それらの分布の形式について議論を行った。 更に、土地改変とそれ以外の環境負荷の比較・検討として、ラオス人民民主共和国にあるPhu Kham鉱山を対象に、エネルギー消費量、地球温暖化ガス排出量と土地改変面積を比較した。また、採鉱現場であるピットだけではなく、その付帯設備である尾鉱ダムの面積の定量化を実施、ある程度の定量化が可能であることを確認した。また、インドネシアにおける石炭採掘に伴うリハビリテーションのインベントリ分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・国際貿易に伴う鉄・銅、ニッケルの国際マテリアルフローデータの年次更新を完了。 ・いくつかの土地被覆タイプにおいて開発手法の採掘推定の分類精度にはばらつきがあるものの,植生帯に位置する採掘領域については安定した面積推定が可能なことが示された。 ・主要な金属種について採掘活動量を定量化できた。また、エネルギー資源についても定量化に成功した。 ・ラオスのPhu Kham鉱山のケーススタディでピット以外の土地改変にも目処をつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、操業実態の反映や精緻化に向けて、国・地域ごとの傾向や鉱山ごとの傾向を反映できるように物質フロー・サプライチェーンモデルの改良、および、土地利用強度指標の精緻化・精査を進める。鉱山の衛星画像解析については、非植生である裸地帯および植生・非植生が混在する農地帯における採掘領域の面積推定手法について検討する。加えて、分析事例を拡充しつつ、更なる効率的な研究実施のために、衛星画像解析を支援するプログラム開発などを進める。また、各解析における解析事例の拡充に際しては、鉱山操業と環境負荷という観点についても踏まえて、注視すべきケーススタディの選定・拡充に取り組む。 更に、各国・各地域における資源採掘や資源採掘に伴う地球改変が引き起こしている社会的問題や環境問題を、定性的情報および定量的な情報を含めて整理・可視化すると共に、確立した手法をもとに、リサイクルを含む技術イノベーション等が採掘活動量等に与える影響の評価にも取り組む。加えて、可視化の際には、公開用のツール作成を含めてインフォグラフィック等の手法を活用することで効果的な情報発信に努める。 加えて、資源利用の持続可能性を強化する為の管理方策の検討を進める。また、上記を通じて、最終年度である事を意識して、プロジェクトおよび各事例解析の取り纏めに注力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
鉱山活動の把握が可能な全鉱山を対象として、操業状況および環境問題への懸念等を踏まえて、約200鉱山の選定および画像検索・選定を完了した。その結果、懸念されていた高額な衛星画像(SPOT)の活用を極力控えることが可能であると判断できたため画像の購入を見送った。この費用は、専門家集団の助力のもとで、衛星画像解析の支援用プログラムの開発用に活用することで、解析対象となる鉱山の拡充を進める予定である。
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