地震などの自然災害発生時には、発災後の火災、土砂崩れ、建物の損壊や倒壊などによって状況が一変する可能性がある。また、地震後の巨大津波への備えのために災害や二次災害の状況に応じた避難行動支援システムの実現が期待される。本研究課題の目的は、ロボット、ドローン、センサ、携帯端末などの通信機能を備えた人工物をIoT(Internet of Things)機器とし、そのIoT機器同士が自律的に連携しながら災害の状況および避難行動要支援者の状況を把握し、適応的に避難誘導を実現するための避難行動支援システム構築基盤技術の確立と実証実験の実施である。 3年目(最終年度)の研究実施計画は、評価用プロトタイプシステムの設計・実装、実証実験フィールドにおける住民参加型の避難訓練を通した実証実験および評価であった。1年目、2年目に開発した各種機能の統合を行い、試作システムの開発を行った。特に、ARを活用した避難誘導支援や避難所運営に関する防災教育、通信断絶時を考慮した避難所運営管理支援システム、光IDを活用した要救助者による救助メッセージ送信機能、避難誘導支援システムにおけるIoT機器の支援状況可視化機能の開発と実験を行うことができた。また、コロナ禍において、実証実験フィールドにおける住民参加型の避難訓練を実施し、三密を避けながら避難所までの避難および避難所での待機に関する運営、津波襲来の恐れがある状況下で消防団員による消防自動車の代わりにドローンを活用した捜索活動および広報活動の支援機能に関する実証実験なども実施することができた。 以上より、新型コロナウイルス感染症拡大によって予定していたフィールド調査、予備実験、成果発表などに関して全体的な遅れや機会損失などが多少発生したが、一方、コロナ禍も考慮した複合災害向けのプロトタイプシステム開発や実験の実施なども行うことができ、目的を達成することができた。
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