研究課題/領域番号 |
18KT0017
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 廣壽 東京大学, 医科学研究所, 教授 (00171794)
|
研究分担者 |
井元 清哉 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10345027)
|
研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
|
キーワード | エネルギー代謝 / 内分泌学 / 代謝学 / 骨格筋 / 多臓器連関 / グルココルチコイド / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
本研究は、応募者が独自に発見した臓器連関とそれを担う候補因子を鍵として、分子生物学と数理科学の有機的結合によって、エネルギー代謝の自発的秩序形成 機構を担う因子を明らかにするものである。特に、すでに確立した疾患モデルマウスを用いて、各種生理学的データ、オミクスデータを包括的に取得し、数理科 学的に解明する点が特徴である。 (A) 昨年に引き続き、疾病モデルにおけるデータの取得:エネルギー貯蔵変容モデルであるGRmKO、肥満誘導性の遺伝子変異を有するob/ob、ob/ob GRmKO、コントロールマウスの4 系統について、体組成、そのほか各種代謝学的データ(体組成、摂餌量、エネルギー消費量や呼吸商、運動耐容能、糖脂質代謝関連の血清生化学、尿中代謝物な ど)を取得した。骨格筋・脂肪組織・肝臓の重量測定、組織学的評価を行った。骨格筋、脂肪組織、肝臓のトランスクリプトームの取得:骨格筋、脂肪組 織、肝臓のトランスクリプトームを次世代シークエンスサーで解析した。血漿・血清のプロテオームとメタボローム解析を実施した。高脂肪食による食餌誘発性 肥満、GC過剰状態(クッシング症候群モデル)、加齢性変化のもとで、体組成などの代謝学的データ、オミクスデータの変容を調べた。 (B) 昨年に引き続き、データ解析および数理モデル構築とシミュレーション:体組成を含む代謝学的データとオミクスデータについて、各種の数理統計学的手法による関連解析や モデル構築・シミュレーションを行った。 (C) 昨年に引き続き、エネルギー代謝への関連が示唆される因子について分子生物学的検証:(A)(B)で見出された鍵因子の候補について、関連する臓器の蛋白質発現や遺伝子発 現、代謝物の変動などを解析した。 以上から、昨年度の成果と合わせ、多臓器連関によるエネルギー代謝制御機構の理解を進展させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル動物を用いたデータ取得は順調に実施された。昨年度、今年度に得られたデータをもとに体組成を含む代謝学的データとオミクスデータを数理統計学的手法によって 解析した。すでに、クッシング症候群、加齢性変化に際して、骨格筋機能と代謝との新しい関係を発見するなど成果が上がった。ただし、オミクスデータに関しては、引き続き、多様な条件下におけるプロテオミ クス、メタボロームのデータはさらに追加取得する必要があり、本格的トランスオミクス解析は次年度以降に実施する。研究成果は適宜論文発表する。
|
今後の研究の推進方策 |
オミクスデータ解析からエネルギー代謝への関連が示唆される因子を同定するとともに分子生物学的に検証する。現時点で数種の候補分子を得ていることから、各分子の意義をCRISPR/Cas9ノックアウト系な どを用いて調べ、エネルギー貯蔵やエネルギー代謝異常との関係を検討し、エネルギー代謝と疾患発症に関わる根源的機構を同定する。それにより、あるいはそ の検証過程から、エネルギー代謝異常を伴う疾患への介入戦略や疾患予測のバイオマーカーを見出し、新たな治療法や予防法の開発、個別医療の実現につなげ る。さらに、各臓器のトランスオミクス解析からエネルギー貯蔵制御と臓器連関を解明する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
オミクスデータ解析を専門とする研究者の雇用が難航しているため人件費の支出が発生していない。また、オミクス解析経費に関しても他の予算によって大部分が賄われており、次年度の高額なメタボローム解析経費に充当可能となっている。
|