研究課題
不動性骨粗鬆症マウスモデルを利用し、μCTや組織学的解析により骨量および骨微細構造の時間的変化、ならびに血中骨代謝マーカーの濃度測定によりその時間的変化を明らかにした。この不動性骨粗鬆症発症時における経時的解析を基盤として、疾患発症予測可能なシミュレータの開発に取り組んだ。並行して、骨CTデータの領域分割のための学習データの作成とその精度検証に取り組んだ。U-Netを利用した各断面での領域分割について、シミュレーションデータを用いた2クラス(骨,背景)の結果はIOUが90%程度となった。実データにおける結果は80%程度となった。さらに海綿骨、皮質骨、背景の3クラスでの領域分割では、シミュレーションデータでIOUが80%程度の結果となり、骨構造における部位ごとの領域分割が一定の精度で可能であることを示した。一方、変形性関節症(OA)は運動器において最も罹患者数の多い加齢性変性疾患であるが、加齢によるOA発症メカニズムについては十分に明らかにされておらず早期診断法もないのが現状である。そこで、老化促進マウス(SAMP8)が、OAを早期に発症するのかを明らかにするために、SAMP8マウスにおける膝関節の病理組織学的解析を行い、14週齢よりSAMP8マウスでは軟骨変性が認められ、23週齢においては、全てのマウスで軟骨の部分欠損、また軟骨下骨に至る全層欠損が観察され、早期にOAを発症するマウスであることを明らかにした。このSAMP8マウスは、軟骨変性に先んじて顕著に軟骨下骨の硬化が進行していることも判明した。この軟骨下骨における病理組織学的変化の評価法は確立されていないことから、加齢性OAモデルとしてSAMP8マウスと外傷性OAモデルマウスを用いてμCTなどのデータと比較・検証を行い組織切片のみによる軟骨下骨の変化を早期に検出することが可能な新たなスコアリングシステムを開発した。
2: おおむね順調に進展している
骨・軟骨疾患モデルマウスを用いた血中骨代謝マーカーや関節組織の時系列的解析から疾患発症過程での変動を捉えることに成功し、さらに疾患発症予測が可能なシミュレーターや疾患の早期診断における利用可能性を実証する画像解析ができたと考えられ、当初の計画通りに研究は進んでいると考えられる。
当初の計画に従って、血中骨代謝マーカー測定や画像解析から骨粗鬆症や変形性関節症の発症予測や早期診断を可能にするシステムの基盤を構築していく。不動性骨粗鬆症モデルを用いて確立したシミュレータを用いて、加齢性骨粗鬆症や閉経後骨粗鬆症モデルに対しても適応可能な包括的シミュレータへと発展させる。さらに、ヒトの血中骨代謝関連マーカーに関する経時的データおよび骨量データを活用して、ヒトへの応用方法を確立する。並行して、画像解析では領域分割された骨構造からの特徴量抽出に取り組む。また、SAMP8マウスはSAMR1マウスに比べ9週齢より大腿骨における骨密度の有意な低下が認められており、このSAMP8マウスに、骨粗鬆症薬として一般的に用いられているビスフォスフォネートを投与する実験を実施し、骨粗鬆症への影響および変形性関節症治療に対する影響について解析を行う。
年度末における研究活動自粛により、一部実験が実施できなかったため。該当する実験は次年度に実施する計画である。
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iScience
巻: 23 ページ: 100874
10.1016/j.isci.2020.100874
Sci Adv
巻: 5 ページ: eaau7802
10.1126/sciadv.aau7802