研究課題
肥満・インスリン抵抗性では、高血圧・糖尿病・脂肪肝炎など、心血管調節・糖脂質代謝・炎症に及ぶ多系統で複雑な生理機能の制御異常が引き起こされる。迷走神経は、その心血管調節作用が知られているが、近年の検討から、炎症や糖代謝の制御にも重要な役割を担うことが解明されている。また、肥満・インスリン抵抗性では、迷走神経制御障害が起こることも明らかにされている。多系統の生理機能を制御する迷走神経の制御障害が、肥満・インスリン抵抗性における複雑病態の形成に重要な役割を担っている可能性が考えられる。そこで、肥満・インスリン抵抗性で引き起こされるこれらの生理機能の制御異常を、「迷走神経の制御障害」という観点から系統的に解明することを目的として、本研究を行った。代表者らは、迷走神経の肝臓炎症・糖代謝制御メカニズムとして、α7型ニコチン受容体重要性を見出している。そこで、本年度には、α7型ニコチン受容体欠損マウス(a7KO)を用いて、肥満・インスリン抵抗性の代表的な肝臓合併症である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における迷走神経性肝制御の役割を検討した。具体的には、a7KOに対し、高脂肪高コレステロール食摂餌またはメチオニン・コリン欠損餌を投与し、NAFLDの発症・進行、すなわち、肝臓の慢性炎症および線維化を検討した。その結果、a7KOでは、炎症性サイトカインと1型コラーゲンの肝臓遺伝子発現が増加し、シリウスレッドコラーゲン線維染色においても、肝臓の線維化の増悪を認めた。これらの知見から、肥満・インスリン抵抗性における迷走神経制御障害が、生活習慣病の一つであるNAFLDの発症・進行に関与することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度には、迷走神経と肝臓における糖脂質代謝・慢性炎症の役割についての検討を行った。具体的に、迷走神経α7型ニコチン受容体欠損マウス(a7KO)を用いて、肥満・インスリン抵抗性の代表的な肝臓合併症である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における迷走神経性肝制御の役割を検討した。NAFLD誘導は、高脂肪高コレステロール食摂餌またはメチオニン・コリン欠損餌の投与により行い、NAFLDの発症・進行の評価は、肝臓の炎症性サイトカインおよびコラーゲン発現により検討した。その結果、a7KOでは、炎症性サイトカインと1型コラーゲンの肝臓遺伝子発現が増加し、シリウスレッドコラーゲン線維染色においても、肝臓の線維化の増悪を認めた。これらの知見から、肥満・インスリン抵抗性における迷走神経制御障害が、生活習慣病の一つであるNAFLDの発症・進行に関与することが示唆された。
迷走神経による糖脂質代謝および炎症制御が、生活習慣病の発症・進行に果たす役割を解明するために、NAFLDへの役割の解明を推進し、実験計画2年目には論文発表を行うことを目指す。さらに、迷走神経刺激にともない変動する血中ホルモンなどを同定し、新規な生活習慣病バイオマーカーとしての有用性を、a7KOなどのマウスモデルを用いて検討する。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Diabetes Update
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