研究課題
肥満・インスリン抵抗性では、高血圧・糖尿病・脂肪肝炎など、心血管調節・糖脂質代謝・炎症に及ぶ多系統で複雑な生理機能の制御異常が引き起こされるが、その病態理解は個々の疾病ごとに行われ、系統的な発症メカニズムの解明は成されていない。そこで、肥満・インスリン抵抗性で引き起こされるこれらの生理機能の制御異常を、臓器連関による代謝制御とその異常という観点から系統的に解明を進めている。これまで、α7型ニコチン受容体が脳・肝連関に重要な役割を見出すこと、さらに、肥満・インスリン抵抗性によってその連関が破綻することを見出している。また、2018年度より、α7型ニコチン受容体欠損が、肝臓炎症性サイトカイン遺伝子および線維化関連遺伝子の発現を増強する可能性を見出し、生活習慣病の一つである非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を増悪させる可能性を見出している。そこで、本年度には、α7型ニコチン受容体欠損の表現型解析を通して、脳・肝連関破綻が、NASH病態に及ぼす作用を検討した。A7KOに対し、NASHを誘導する高脂肪高コレステロール食(AD; atherogenic high-fat diet)投与を行い、肝臓炎症・線維化を関連遺伝子発現解析および組織学的検討に加え、血液パラメータ解析を行った。AD投与では肝中性脂肪蓄積が増加し、血漿トランスアミナーゼレベルが上昇した。また、A7KOでは、対照と比して、血漿トランスアミナーゼレベル上昇が亢進した。A7KOは、AD摂餌下で、肝臓炎症性ケモカインCcl2遺伝子および肝臓線維化関連Col1a1遺伝子の有意な発現増加を呈した。シリウスレッド染色による肝臓組織解析において、A7KOでは、AD投与に伴う肝線維化が増悪した。これらの結果から、A7nAchR作用の障害が、肝臓脂肪蓄積に伴う肝臓炎症・線維化の両者を増悪させることを明らかにした。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
J Diabetes Investig.
巻: 12 ページ: 35-47
10.1111/jdi.13319. Epub 2020 Jul 23.
iScience
巻: 24 ページ: 102217
10.1016/j.isci.2021.102217.
JCI Insight.
巻: 5 ページ: e128820
10.1172/jci.insight.128820.
Commun Biol.
巻: 3 ページ: 313
10.1038/s42003-020-1026-x.
Sci Signal.
巻: 13 ページ: eaaz1236
10.1126/scisignal.aaz1236.
https://inoue.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html