研究課題/領域番号 |
18KT0021
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片平 健太郎 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (60569218)
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研究分担者 |
国里 愛彦 専修大学, 人間科学部, 准教授 (30613856)
山下 祐一 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第七部, 室長 (40584131)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | 計算論モデリング / 精神疾患 / 強化学習 / オンライン実験・調査 / 予測 |
研究実績の概要 |
精神疾患は多くの要因が複雑に関与し,その原因の解明や予測は困難な課題である。近年,行動の背後にある計算過程を数理モデルで表現した計算論モデルを用いることで,各種の精神疾患の特徴が行動データから検討されている。ただしそれらの研究は,現状では疾患の傾向とその時点の行動の特徴との相関関係を記述することにとどまっており,それが予後や治療反応性の予測に役立つか否かは十分に検討されていない。そこで本研究では,計算論モデルでとらえられる特徴が,病態を直接的に反映しているものか,予後を予測するものであるかを検討することを目的とした。 最終年度にあたる2020年度では,前年度に1か月強の間隔をあけて2回にわたり実施したオンライン実験・調査のデータを,計算論モデリングやその他の統計分析により詳細に分析した。行動課題は2腕バンディット課題と呼ばれる,二つの選択肢からの選択に伴って報酬が提示される課題を用いた。 まず,計算論モデルの一つである強化学習データを参加者ごとの行動データに適用した結果,逆温度と呼ばれる行動のランダム性を反映するパラメータと抑うつ傾向の間に負の相関がある (抑うつ傾向が高いほど選択のランダム性が高い) という,先行研究と一貫した傾向が確認された。また,その相関関係は2回の調査間の抑うつ傾向の変化とは連動していなかった。このことから,先行研究で知られていた逆温度は,抑うつの状態ではなく,関連する個人の特性を反映されたものであることが示唆された。時系列データを扱う統計モデルの一つである交差遅延モデルを用いた分析の結果,1回目の逆温度が高い(ランダム性が低い)個人は2回目の調査時の抑うつ得点が有意に低くなるという結果が得られた。この結果は,強化学習モデルのパラメータで説明される個人の特性が,精神疾患の予後の予測に有用なものであることを示している。
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