研究課題
新規ダウン症モデルマウス樹立に向けて、目的3’側への loxP 挿入した組み換え ES が完成し、個体化し、 ES 単離も行った。更に5’側の相同アレルに LoxP を挿入を追加した組み換え ES 細胞を得た段階である。またダウン症因子-1 (DSCR-1) の欠損マウスとApoE 欠損マウスとの掛け合わせ実験を行い、DSCR-1 欠損の影響が大血管内皮と末梢循環内皮とで大きく異なること、例えば高脂肪食負荷にて生じる動脈硬化プラーク形成度合いが DSCR-1 欠損だと減弱する一方、ApoE単独欠損マウスに比べ DSCR-1 とのダブル欠損マウスでは更なる病的高コレステロール血症を呈し、その結果、末梢での脂肪腫や角膜混濁にまで至ることを見出した。この角膜血管新生の中心的役割を担う SDF-1-CXCR4 シグナル軸について解明し、論文の revise ssubmission を行った段階である。一方、DSCR-1 の血管内皮特異的安定発現マウスも樹立した。これは、ヘテロ Tg マウスだけが viable で、ホモ Tg マウスでは血管リモデリングが始める時点で血管成熟が生じずに胎生致死になることが判明している。このヘテロ Tg マウスではダウン症同様、 NFAT の機能低下から胎仔の発育遅延にも繋がる結果となり、更に本マウスで血管分岐の異常や血管恒常性の低下が顕著に認められることから、 NFAT/DSCR-1 シグナルの血管分岐・血管リモデリング機能への根本的な原理解明に繋がる可能性が示唆されている。更に、共同研究者からダウン症 iPS 細胞の供与を受け、安定的に培養出来ている段階である。
2: おおむね順調に進展している
Hi-C 解析に向けてまずダウン症 ES の培養を開始出来ていること。ダウン症モデルマウス樹立に向けては、現段階では全5ステップの内、3ステップ目に入っていること。ダウン症の複合疾病を考える上で、研究代表者での血管機能解析に加え、共同研究者の血液研究、神経研究との融合を考慮しているが、更に、行動実験薬理、骨粗鬆症、筋肉活性、不妊を専門とする研究者とダウン症モデルマウス解析を軸とした共同研究が進むことを計画しており、順調に進めば大きな相乗効果が期待される。
新規ダウン症モデルマウス樹立においては、目的 ES 細胞からの個体化が成功すると、ダウン症にて重要視されてきた遺伝子セットを全てトリソミー化したモデルマウスが日本初で出来るので、迅速に出来るよう、ここに集中できる研究員の雇用経費を一部、本科研費で扱う予定である。DSCR-1 の血管機能解析について、とくに動脈硬化との関連性は早期論文化を図るとともに、新たに見出した NFAT と血管分岐、発芽などの原理解明に繋がる実験データを積み重ねて、新たな血管分岐の概念が生み出されるよう、研究推進を図る。ダウン症 iPS での Hi-C 解析では、東大先端研での先行技術を学び、今年度中に一回 Hi-seq で実験できるよう、共同研究者との話し合いを進め、先ずは Hi-C 解析条件が固定化できることを目指す予定である。
新規ダウン症モデルマウス作製のための ES 細胞を樹立し、その6クローンをinjection したが、結果としてどれもキメラマウスへの供与率が10%未満とかなり低く、モデルマウスの作製において、再度 ES 構築のステップから開始する必要が生じた。そこで、このマウス化にむけた ES 再調整におけるスタッフの雇用費の一部を今年度に移行させた。更にダウン症由来 iPS 細胞の獲得に倫理手続きを含めて時間が要し、今年度から iPS 細胞の培養と Hi-C 解析を始める予定となったので、その解析費用を今年度に移行させた。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (4件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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